連日の30年債の最低利回り更新
世界中の投資家のリスク回避の動きが加速しています。
連日の米30年国債の利回り最低値を更新し、はじめて30年債の利回りが2%を切りました。過去最低の1.991%にまで落ち込み、これでついに全ての期間の国債で、現在の政策金利2.00-2.25%を下回ることになりました。
前日に過去最低の利回りを記録したときも、ボーダーラインを巡ってもつれ合うことなくあっけなく更新しましたが、今回も2%割れで数日もつれる展開など露知らず、あっさりと最低値を更新しました。
景気後退はまだしない
一般的に投資家が国債を買うのは、景気後退を懸念して資金を安全な国債に移すからですが、今回の米国債利回り急低下を受けてアメリカがすぐに景気後退をするかというと、私はそれは違うと思っています。
たしかに新興国・発展途上国などの経済体力がない国、ドイツのような工業中心の国の経済は、すでに雲行きが怪しくなっています。でも製造業の比率が低く、直近のGDPの発表で個人消費が年率+4.0%で成長しているアメリカが、他の新興国や工業国のように、急に景気後退入りするとはどうしても思えないです。
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前FRB議長のイエレン氏も、アメリカの景気後退入りのリスクは高まっているものの、今のアメリカ経済について「(景気後退を)回避するに十分に力強い」と発言しています。
米景気後退入りの公算小さい=イエレン前FRB議長(ロイター)
ちなみに、このイエレン氏へのインタビューは8月16日にフォックス・ビジネス・ネットワークで公開らしいのですが、どんな内容が話されたのか、できる限りチェックしたいと思います。
アメリカ国債が買われる理由
ではなぜ、こんなにもアメリカの国債が買われているのかというと、景気の先行き不安が見え始めた新興国や工業国に投資していた資金を安全な先進国の債券に移そうと思った時に、他の国に比較してアメリカ国債が圧倒的に安全かつ利回りが高いからです。
例えば、2019年8月のアルゼンチンの暴落が発生するまでアルゼンチン株は非常に好調でした。4年間でアルゼンチン株のメルバル指数は5倍にもなっていました。
しかし、アルゼンチンで暴落が発生すると、株・債券・通貨全てで資金が引き上げられる動きが起こりました。その後、これらの新興国・発展途上国に投資していた資金はどこに向かうかというと、その先にいるのが先進国の国債など安全な資産です。
そうなった時にドイツ・フランス・日本の長期国債利回りがマイナスな中、アメリカは2%前後も国債利回り、大変魅力的に見えます。このような背景で、世界の経済不安からアメリカの国債が買われているように思えます。
つまり、アメリカの国債利回りの急低下は純粋にアメリカ国内の景気の先行きを反映しているのではなく、アメリカ以外の国の景気先行き不安も相まって買われていると考えてます。
だから、アメリカ国債が異常なペースで買われていると言っても、直ぐにアメリカが景気後退を入りするわけではないと思うのです。