今週は金曜日にPCEデフレータというアメリカのインフレ率の発表があります。
今回の結果がどうなるかはフタを開けてみないとわかりません。
ただ、PCEデフレータよりもリアルタイムにアメリカのインフレを表すデータを見ていると、アメリカのインフレ低下は続いているようです。
なので、今週発表の12月のPCEデフレータの結果が高くでも心配はいらないと思われます。
この記事のポイント
- 即時性の高いアメリカのインフレデータでは、既に物価の伸びが前年比2%を下回るものも出てきている。
- アメリカのインフレは現時点では問題ではない。FRBが見ているPCEデフレータは反応が遅いので、いつ2%となるかが利下げ時期を決める。
- 利下げが遅れれば、(まだ心配をすることはないが)2024年のどこかで2%を下回る低インフレになる可能性も出てきている。
インフレ低下が進むアメリカ
PCEデフレータはFRBも注目しているインフレ率ですが、実際のアメリカでの物価の動きにやや遅れて数字が動くという欠点があります。
そのために、以前このブログではよりリアルタイムにアメリカの物価を調べる方法としてTruflationというサイトを紹介しました。
今、このサイトを眺めると少し面白い数字が見られます。
2024年1月になってから物価の伸びは一層小さくなり、ついに前年比で2%を切るまで低下しました。
ちょうど1年前にTruflation上でのインフレ率は前年比6.3%だったので、この1年間でアメリカのインフレは急速に低下したことになります。
注意点について
1点注意したいのは、Truflationの値が下がっているからと言って、今週発表のPCEデフレータも低く出るというわけではありません。
Truflationのインフレ率低下が進んだのは1月である一方、今週発表のPCEは12月分で時期が違います。(ただでさえ、政府発表のPCEデフレータや消費者物価は数字が遅れて反応するという性質もあります)
どちらかというとPCEデフレータと関わりが深いのは消費者物価ですが、下図で示したように12月の消費者物価(青線)はわずかに上昇しているので、PCEデフレータ(赤線)も次の発表で上昇する可能性のほうが高いです。
ただ、おそらくTruflationが示すようにアメリカの物価は落ち着き始めているので、PCEデフレータの値が予想以上に高かったからと言って心配はいらないと思われます。
問題は遅れて数字が動く傾向にあるPCEデフレータがいつ2%を示すかです。この時期が投資家待望の利下げの時期の鍵を握っています。
さいごに
まだそれほど心配はいらないことなのですが、気になったことを書いておきます。
Truflationのデータを見ながら、2024年のどこかでアメリカの物価はPCEデフレータですら2%を下回って低インフレになるのではないかという考えが頭をよぎりました。
2023年の1年間でアメリカのPCEデフレータは5.4%から2.6%にまで低下しましたが、ここまで下がった要因としてFRBの高い政策金利が考えられます。しかし、2.6%にまで下がったのにFRBはまだ利下げせずに高い政策金利を保っています。
また、市場の予想では5月(早ければ3月)には利下げが始まるようですが、その利下げ幅は利上げ時とは違って0.25%ずつと小幅です。じっくりと利下げをしているうちに、アメリカのインフレ率は2%のレベルにとどまらず、さらに下がることはないのでしょうか。
低インフレの予兆なのかわかりませんが、10月のPCEデフレータは前月比・年率+0.6%、11月は同マイナス0.9%と2ヶ月連続で随分と物価上昇のペースは鈍いです。
インフレの低下は、多くの企業にとって(名目)売上の低下になります。
だからこそ、売上成長が見込めるAIブームに乗っかった半導体企業の株がさらに買われそうですが、ブームはいつか終わります。2024年は企業全体が低迷する中で、ごく一部の株だけが買われて、市場の不安定さはさらに増していく気がしています。