この記事では、まだアメリカに訪れていないリスクについて書こうと思います。ドル安についてです。
米国株の投資家はS&P500が「上がった」「下がった」という話はしますが、あまりドル高やドル安については話がされていない印象があります。
2022年や2023年にはアメリカは政策金利が引き上げられてドルをもつ旨味が増して、ドル高はしばらく続くと思うので。ドル安は差し迫った心配ごとではありません。
しかし、アメリカのインフレが続けば、日本人にとって米国株投資は悲惨な目にあう可能性もあると思っています。
この記事のポイント
- 日本人の投資家は、米国株で「金融緩和による米国株上昇」と「ドル高」の2つの恩恵を受けてきた。
- 2022年からはインフレとの戦いで金融緩和が縮小されるだけでなく、インフレが長期化すればドル安のリスクも追う。
変わりつつある投資環境
この10年間で、日本人の間でもずいぶんと米国株に投資する人が増えた印象があります。
証券会社のサービスが良くなって取引できる環境が改善したこともありますが、主な理由は次の2つの理由で米国株のリターンが大きくなったことだと思っています。
- リーマンショック後から続く金融緩和(低金利で米国株が上昇した)
- 10年続いたドル高(ドル資産に投資すれば、日本円の評価額が上がった)
ただ、この2つの投資環境はこれから数年で悪いほうに変わってしまう恐れがあると思っています。
今のアメリカは金融緩和はすでに不要なほど景気が良いので、来年2022年からは政策金利の引き上げ(利上げ)が始まります。
>>【参考記事】インフレの加速に重い腰を上げたFRB【21年11月振り返り】
しかも、今後の利上げは2015年から2018年までの利上げと違って、高いインフレを退治する利上げが必要になるので、景気が冷え込むことになっても素早く・大きな利上げを続けないといけません。
ですが、私の予想ではインフレを根絶するような素早くて大きな利上げはかなり難しいと思います。
10年以上も金融緩和になれきった投資家も、新型コロナの流行時に現金給付でドルをばらまいてくれた記憶を鮮明に持つアメリカの国民も、株の下落と景気の悪化の痛みに耐えられずにすぐに利上げを拒否して、金融緩和と景気刺激策を再び求めるはずだからです。
FRBのパウエル議長とバイデン大統領が世間を敵に回しても心を鬼にしてインフレに立ち向かえれば良いのですが、どこまで骨のある人かどうかはわかりません。
緩和の代償としてのドル安
もしも、インフレを収束できずに5年から10年長引かせてしまった場合には、その結果として大きなドル安が起こると思います。
アメリカでインフレが続いた時期は1970年代が有名ですが、このときにはドルは大きく下落しました。
以下は1970年代のドル円のチャートですが、ドルは最大で半分まで安くなっています。
ドル円だけでなく、世界の国の中ではかなり財政がしっかりして通貨の下落を起こしにくいスイス・フランと比べても、1970年代はドルが6割以上で大幅に安くなっています。
2020年代もドルの下落があると決まっているわけではありませんが、私は起こる可能性はあると思います。
私も含めて米国株を保有する長期投資家は、「アメリカのインフレが長期化しないか」「インフレの長期化がドル安を招かないか」を気にする目線がこれから必要になる気がします。
時期的にはそろそろドル安に転換してもおかしくない
ちなみに、時期的にはすでにドル安になっても不思議ではない頃に差しかかっています。
次図はドルの強さを表すドルインデックスと呼ばれるグラフです。
リーマンショックから10年以上続いたドル高の流れは、実は1990年代のITバブル崩壊までのドル高の流れとかなり形が似ているのですが、この形と同じような展開をたどるなら時期的にもグラフの形的にもそろそろドル高が終わっても不思議ではありません。
さいごに
この記事では、2020年代のどこかで来るかもしれいないドル安について書いていきました。
今までの10年間はドル高の流れが続いていたので、日本の米国株投資家は米国株の上昇とドル高の2つの恩恵を受けることができました。
しかし、時期的にもそろそろ長期的なドル安に転じておかしくない時期にきています。
そのきっかけになりそうなのが、長期化した場合のアメリカのインフレです。1970年代ほどの極端なインフレやドル安にならなくても、せっかくの株高で得た利益がドル安で大きく削られる事になるかもしれません。
2013年から私は米国株に投資してきましたが、2020年代は米国株への投資1本では資産を大きくするどころか減らしかねないとも思っています。
ドル安が長期的に起こりそうだと判断した場合には、今後数年で実物資産やインフレに強い(デフレ的な通貨)に資金を移す必要があるかもしれません。
例えばゴールド、不動産投資信託(REIT)、コモディティETF、現金を持つなら日本円やスイスフランなどが候補になります。ドル安が進んだ場合には、これらを積極的に保有することになりそうです。