FRBは政策金利の高止まりを続けると発言していますが、これがいつまで続くかの鍵を握っているのはアメリカの雇用だと思っています。
ちょうど今週金曜日に8月の雇用統計の発表がありますが、いつから雇用者数の伸びと賃金の伸びに鈍化が見られるのかが注目です。
この記事のポイント
- 市場は金融引き締めが長引くことを警戒して、株価は下落している。
- 2022年前半に比べると、エネルギー価格も住宅価格も伸びは鈍化しているようだが、賃金の伸びは高止まりが続いている。
- FRBは賃金の伸びがコロナ前と同程度のまで下がるまでは、金融引き締めを続けるように見える。
長引く金融引き締めと株価の下落
FRBの高官の発言から、アメリカの政策金利が予想していたよりも高止まり続きそうだとわかってから、株価の下落が続いています。
パウエル議長が講演した先週金曜日からS&P500は下落傾向です。
では、なぜ政策金利が高止まりさせたほうがいいとFRBは考えているのでしょうか。
今のアメリカは新型コロナ流行前よりもずっと雇用が強い状態が続いていて、これを抑えない限りインフレが2%に戻らないとFRBは考えているのではないと、私は思っています。
価格の伸びが続くものと鈍化したもの
2022年の前半は原油などのエネルギーが上がってあらゆるモノの価格が上昇していましたが、今は少し状況が変わりました。
確かに天然ガスの価格は高騰が続いているものの、その他の原油やその他コモディティ(商品)は以前よりは落ち着いています。
(脱線しますが、いくつかのコモディティはこの1ヶ月くらいで価格が再び上昇しているのは少し気になっています。一時的な小幅な反発なのかも知れませんが)
また、利上げで住宅ローン金利が上がったことで、最近では住宅価格の伸びも鈍化している傾向にあります。
しかし、最後の砦のように今もビクともせずに高止まりを続けているのが、賃金のインフレです。
上のグラフを見ても、新型コロナ流行前よりもずっと高い賃金上昇が続いています。これが収まらない限りはアメリカのインフレはコロナ前の上昇に収まらないのだと思います。
雇用環境はまだまだ十分強い
賃金の上昇が止まるためには、労働者有利の雇用環境を冷やす必要がありますが、これはまだまだ改善していません。
7月の求人率と失業率を見ても、失業者が少ないのに求人数が多い人手不足が続いて、まだまだ賃金が上昇しやすい環境が続いていることがわかります。
このグラフの形を見てみると、過去に求人率(青線)が失業率(赤線)を上回って、労働者有利が有利な状況になっているのは、かなりレアなことだとわかります。
今は過去20年と違ってかなり珍しく労働者有利な状況で、賃金の上昇を抑えるためには政策金利を引き上げて企業の景気を冷やして求人を抑える必要がありますが、これにはかなりの時間がかかります。
なので、FRBは高い政策金利が続くと考えているようです。
株式市場にとっては政策金利が長続きすると株価に悪影響が出るので、変な話ですが、早く雇用が弱まって景気後退に入ってくれたほうが傷は浅く済むのかも知れません。