この1年間くらい、アメリカの雇用について薄く広く調べているうちに気づいたことがあります。
新型コロナウイルスの流行後からアメリカは人手不足に悩まされましたが、その前から少しずつ人手不足の要因が進行していたように見えます。
恐らくですが、アメリカの人手不足は長期的なトレンドで、5年後か10年後か20年後になるかわかりませんが、私が投資をしている間にはほぼ必ずアメリカはどこかで大きなインフレか大きなドル安の時代に見舞われるだろうと思います。
この記事のポイント
- 2020年から2022年のアメリカは手元にお金はあるのに、モノ・サービス(やそれらを提供する人手)が足りないためにインフレに見舞われた。
- アメリカの人手不足はコロナ後に大きく報道されるようになったが、リーマンショック以降から変化が見られる。
- リーマンショック以降のアメリカではお金を持つ高齢者が増える一方で、労働力人口の伸びが鈍化している。これは長期的なインフレ要因になり得る。
インフレの要因のおさらい
本題に入る前に、近年のインフレの要因をおさらいしておきたいと思います。
2021年から2022年にかけてアメリカでインフレが進んだ要因は、「お金はあるのにモノ・サービスが不足していた」ことがあげられると思います。
新型コロナウイルスが流行した頃に何度か配られた現金給付で、アメリカの人々は手元にお金はありました。しかし、例えば車を買うにも半導体不足で新車が少なく、特に中古車市場は急激な値上がりが見られました。
このようにお金はあるのにモノ・サービスが足りない状態では、インフレが進むことを再認識させられました。
アメリカの人手不足はリーマンショック後から
2022年にアメリカ中央銀行FRBが急激な利上げをすすめると不動産価格が下がり、原油価格も下がり、残りは人件費の高止まりが収まればインフレ沈静化が見えてくるというところまで来ています。(2022年12月現在)
しかし、調べるほどに人件費の高止まりを引き起こしているアメリカの人手不足は根が深いのではないかと思い始めています。
今回、新型コロナの流行後にアメリカでは人手不足が叫ばれ始めましたが、労働力人口の伸びの鈍化はコロナよりももっと前の世界金融危機後(リーマンショック後)から始まっています。
人手不足はこの頃から既に始まっていたのではないかと思います。
原因は恐らく労働者の高齢化です。リーマンショック以降に生産年齢(15歳から64歳まで)の人口の割合が急低下しています。
でも2010年代にすぐに人手不足とは言われませんでした。そもそも100年に1度の金融危機で不況で人々のサイフはさみしかったので、人手不足のインフレどころかデフレの危機すらありました。
しかし、新型コロナ流行時の給付金で消費できる余裕が生まれると、モノやサービスが足りなかったり、そもそもモノを生産する人やサービスを提供する人も足りないことに気づき、インフレにつながりました。
長期的なアメリカへの投資でどこかでインフレに見舞われる
この記事では、アメリカのインフレにつながる人手不足がコロナからではなく、リーマンショック後の労働者の高齢化から始まっていることについて書きました。
2022年のアメリカの人手不足はコロナの影響だけではなく、世界金融危機以降にアメリカの労働者が高齢化してリタイヤする人が増え労働人口の伸びが鈍化していることも一因と言えそうです。
そうであれば、アメリカの人手不足やインフレはコロナによる一時的なものではなく、かなり長期的な問題として再浮上するかも知れません。
一点注意したいのは、2023年にアメリカでインフレが再燃すると言っているわけではありません。むしろ2023年は金融引き締めの影響で景気後退がやってきて、インフレは鈍化すると私は思っています。
しかし、5年後なのか10年後なのかわかりませんが、少なくとも私が今後30-40年以上投資を続けている間に「リタイア世代はお金もあって消費したいのに、現役世代が少ないのでモノの生産やサービス提供が追いつかない」という問題が深刻化すると思われます。
この時にアメリカでは大きなインフレか大きなドル安か、もしくはその両方がやってくるだろうと思います。
この影響を受けるのは、米国株(S&P500など)や米国債に超長期投資をする投資家です。対応策としては全世界の株に分散投資する、REIT(不動産投資信託)にも投資する、わずかにゴールドやコモディティも保有するなどが考えられます。
2022年になって、米国株への超長期一点集中の投資は以前思っていたほど安全ではないことがわかりました。