最近では、既にアメリカはリセッション(景気後退)に突入していると言う声が多くなってきました。バンク・オブ・アメリカも、既にリセッション入りしているという考えを持っているようです。
たしかに最近は特別な調査や算出をしなくても、公開されている情報を見るだけで、アメリカの経済が何か調子が悪くなっていると分かるようになってきました。
失業者は目に見える形で増加をはじめました。また、アメリカ企業の社債を見ると急速に売られてて、社債市場は企業の急速な業績悪化を既に織りこんでいます。
この記事のポイント
- 2月のアメリカの経済指標は好調だったが、3月になってから崩れ始めた。特に失業者数は今週大きく悪化した。
- 社債があきらかに大きく売られている(社債スプレッドが過去のリセッション入りの水準まで上がっている)。
- リセッション入りすれば、「新型コロナウイルス収束後は、すぐに景気は回復する」というシナリオは期待薄になる。
- リセッション入りした場合には、低迷相場は長続きする傾向があるので、投資機会が来たと感じても慎重に資金を使う必要がある。
リセッション入りすれば、短期間で景気回復するシナリオは描きにくなります。
やはり手元の投資資金は一気に使い切らず、少しずつ使うように慎重に動く必要がありそうです。
上昇しはじめた失業数
アメリカの失業率が急上昇しはじめて、いよいよリセッションが近いのかなと感じます。
3月8-14日の1週間で申請があった失業保険の数は、予想以上の悪化をしていて、失業者が増え始めたことを示しています。
3月8-14日新規失業保険申請件数
- 予想:22.0万人
- 結果:28.1万人
ただ、あとから振り返った時に「この週はまだ良かった」と言えるかも知れません。ガンドラック氏のツイートによれば、ゴールドマン・サックスは、翌週報告される失業保険申請数は225万人と予想していて、前の週の10倍に膨れると見ているようです。
Goldman Sachs: “State-level anecdotes point to an unprecedented surge in layoffs this week. These anecdotes suggest that the next jobless claims report….will show that initial claims rose to roughly 2.25 million.” That’d be up 10x.
— Jeffrey Gundlach (@TruthGundlach) March 20, 2020
急速に売られる社債
社債市場は、アメリカ企業の業績が低迷して、資金繰りが悪化すると見ているのか、社債が急速に売られはじめています。
以下のグラフは、社債が売られた場合に上昇するスプレッドと呼ばれるものを表示していますが、急速上昇しています。
(※社債スプレッドは、社債の利回りから国債などの安全資産の利回りを引き算した数字です。スプレッドが上昇すれば、アメリカ企業の返済能力が悪化していると見ることができます。)
格付会社が十分な返済能力があると健全と判断した企業(投資適格の企業)の社債スプレッドでも、上昇しています。

また、格付け会社が返済能力にやや難があると判断した企業の社債スプレッドも、急上昇しています。

上のグラフで見ると、グレーで色がついている過去の2回のリセッション入りの水準を既に超えています。
社債スプレッドというと聞き慣れず、イメージが沸きにくいかも知れませんが、「ふむ。どうもアメリカ企業はヤバそうだな」と感じて、もらえたら大丈夫です。
「社債スプレッド」の見方については、こちらの記事でも紹介しましたので、時間があればあわせてご覧ください。
>>【米国株】今、荒れている相場の中で見るべきデータと読み方。
景気後退に突入すれば、低迷期の長期化と深刻化も
ここまでは最近の失業者の急増と、社債の急激な売りから、どうも景気後退が近そうだというお話をしました。
「景気後退になってもならなくても、投資家がやることは変わらないのでは?」と思うかも知れません。
たしかに、安くなったら買えばいいので、やることは変わりません。
でも、景気後退になるほど経済が深刻なダメージをうければ、株価が低迷する期間や下落率が大きくなるというデータがあります。「ここが底値だ!」と思って一気に投資資金を使った後で、さらに株価が下げるということがないにないように、慎重に動く必要があると思っています。
タイプ毎に異なる株の低迷相場の規模
株価低迷期のタイプ | 平均期間(月) | 平均下落率(%) |
---|---|---|
バブル崩壊 金融危機 |
42ヶ月 | -57% |
普通の景気後退 | 27ヶ月 | -31% |
一時的な低迷期 (景気後退なし) |
9ヶ月 | -29% |
詳しいデータは、こちらの記事を参照してください。
ウイルス収束後の急速な回復期待が薄れる
2020年2月までは「アメリカでの新型コロナウイルスが収束すれば、株価は急速に回復するのでは?」という見方を私も持っていました。ただ、最近になってこの楽観的な見方は急速にしぼみつつあります。
急速なV字回復の期待が薄れてきたのは、(1)倒産する企業が続々と出たらウイルス収束してもすぐに元通りにはならない、(2)アメリカ国内でウイルスが収束してもしばらく国境を閉ざして、海外売上回復まで時間がかかるためです。
なので、ウイルス収束後はV字回復よりも、しばらく時間をかけて回復する横長なU字型の回復になる気がしています。