最近の私は、これからさらに株が下がる場合にも備えて、かなり慎重に投資をしています。
なので、最近の記事は「まだ下落があるかも知れない」という論調が多くなっているのですが、記事に関するメッセージや問い合わせを見ていると「最近はPERが割高だし、自分も株の購入は控えている」という意見をこの数日で多く見かけました。
通常ならPERが高ければ割高、低いければ割安だと判断できます。なので、最近のPERが高くなっていることから株が割高だと判断して、株の購入を控えたようです。
投資の判断は個々の投資家の考えを尊重したいと思っているので、参考程度に聞いてもらえると嬉しいのですが、あくまでも私の考えでは「不況時では、あまりPERを見なくていいのかも知れない」と思っています。
この記事のポイント
- 通常時ではPERが大きければ株が割高、小さければ株が割安と判断できるが、不況時にはPERは参考にならない。
- 理由は、不況時にはPERが大幅に上昇してしまうため。PERは(株価)÷(一株利益)で計算するが、不況時には一株利益が大きく減少するので、PERは普段より大幅に上昇してしまう。
- 実際に、リーマン・ショックがあった2009年はPERが3桁になるまで上昇した。でも、その時投資すれば、10年で3倍に株高になった。このときも、不況時のPERは参考にはならなかった。
たしかに、このブログでも以前、「新型コロナウイルスによる株安で、2019年と2020年年初に感じていた株の割高感がなくなった」という記事を書いた際に、PERの数字を使って説明した記憶があります。
その記事で「どんなときでも、PERで割高や割安を調べられるんだ」と誤解を与えてしまっていたら申し訳ないので、ここで一旦説明します。
PERとは
PERとは、PERは(株価)÷(一株あたり利益)で計算する値のことです。この数字が大きければ株は割高、小さければ割安と判断します。
なので、通常時ならPERを見ながら、「PERが高いから、株は買われすぎているかもしれない。今は投資を控えよう」などの判断に材料に使ったりします。
たとえば、以下の記事は過去の150年間のPERと10年後の株のリターンを調べて、2020年2月はPERが高いから株への投資は控えようという記事を書いています。
2020年、これからの米国株への追加投資を控えるべき理由
2020年も米国株は強いです。2020年2月はS&P500は歴代最高値を更新しています。ただし、さすがに高くなってきた感じがします。S&P500のPERは25を超えて割高な水準です。そして、今この状態で投資しても今度10年間で高いリターンが期待できないと過去のデータが示しています。
新型コロナウイルスで株価の急落になる前から、PERが高くて割高だというシグナルを検知していれば、投資を控えることもできました。
企業の利益が大きく減少する不況時ではPERは役に立たない
普段は、割高か割安かを調べるのに便利なPERですが、もしも不況になってしまったら、PERはあまり使えない数字になってしまいます。
理由は簡単で不況では企業の利益が大きく減少してしまい、PER = (株価) ÷ (一株利益)の値が、株価に関係なく大きな値になってしまうからです。
普段は企業の利益は年間で数〜10%程度しか変化しないので、PERに大きく影響を与えるのは一株利益ではなく、株価です。なので、通常はPERを見れば、株価が高いのか低いのかわかりました。
でも、不況時にはPERに大きく影響するのは一株利益になるので、PERを見ても株価が高いか低いかわからなくなります。たとえば、2020年に、米国のエネルギー業界の利益は88%減少すると見られていますが、こうした状況では株価に関係なくPERが極端に高くなります。
リーマンショック後でPER3桁を記録した時期
不況時のPERは異常に高くなる傾向があるので、PERで株価が割高なのか割安なのか判断がつかなくなるという話をしてきました。
実際に例を見たほうが早いかも知れません。リーマンショック後の2009年5月に、S&P500のPERは3桁になるほど上昇した時期がありました。
もちろん、この時期は株は売られてとても安くなっていたのですが、企業の利益が減少したのでPERが大きくなっていました。
PERだけで判断していたら、「買わない」という選択をするはずです。しかし、この時もしも株を買っていれば、その後10年間で株価は3倍に上昇しました。
不況時にPERに頼って判断していたら、大きなチャンスを逃していたことになります。
PERは普段なら、株の割安・割高を判断する良い材料を与えてくれます。でも、企業の利益が大きく減少するような不況時には、PERが大きくなる傾向があるので、この時期ばかりはあまりPERを過信しないほうがいいかも知れないと思っています。