今年になってから「個人投資家の海外投資が積極的になっている」と言った記事や、「米国株に投資を始めている人が増えている」という話をよく見聞きするようになりました。
少しだけ先に、米国株をやっていた人間としては嬉しい内容です。ただ、嬉しさと同時に、こうした動きは一過性で終わってしまうかも知れないという後ろ向きな考えも頭をよぎります。
今までの投資ブームを見ていると、80年代の不動産投資ブームでも、2000年代のFXでも、2017年の仮想通貨ブームでも投資に疎かった人たちが手を出す頃には、ブームは終盤を迎えていることが多く、その後に大きな損を出す結果に終わることも珍しくありません。
投資の世界はとっても非情なので、夢を持って投資の世界に挑んできた初心者を、わずか数年でふるい落とそうとする傾向があるようです。
そこで「なんだ、やっぱり投資は怖いものだ」と考える人は離れていき、「一度は失敗したけど、もっとうまくやれたはずだ」と再び立ち上がる人だけが、その後の投資でリターンを手にできるようになります。
米国株投資家が増えていることも、それを伝える記事が増えていることも良いことです。その良いことが続くように、投資を始めてからすぐに失敗が待っていて、その失敗をどう乗り越えるかこそが重要なことも知っておくと良いと思います。
この記事のポイント
- 投資の世界は、初心者がまず洗礼を浴びてしまう仕組みがある。
- 投資の失敗を乗り越えて、投資を継続した人だけがリターンを出せるようになる。
初心者が投資で失敗しやすい仕組み
とても残念で残酷な話なのですが、初心者は失敗しやすい時期に投資を始めてしまう傾向があります。
投資のブームは以下の3段階があると思っているのですが、初心者の人が投資をはじめるのは大抵は一番遅い3段階目です。
投資のブームができるまでの3段階
- (1)世界の中でも際立った一部の投資家だけが、ある投資が魅力的だと気づく。
- (2)多くの投資家も、その投資の魅力に気づく。
- (3)最後には、全ての人がその投資だけは今後も価格が上がり続けると思い込む。
初心者がある投資を始めようとするとき、「まわりで儲かっている人がいたから」、「新聞・雑誌・本でこの投資が人気になっていると聞いたから」と理由で始めたとすると、恐らく上記の(2)は過ぎて(3)の段階になっている頃です。
つまり、初心者が手を出すときには、ブームの終わりが近く、投資の失敗をしやすい環境で始めてしまうことが多いのです。
1929年の米国株ブームでは、株をやったことがないような靴磨きの少年が株の話をしたら投資のブームも終盤だという有名な話が生まれましたが、これは(3)の状態のことを指しています。
既に終盤に来ている米国株のブーム
あくまでも私の見方ですが、恐らく2020年の米国株への投資は既に上の(3)の段階に入っていると思います。
世界中の優れた投資家たちは2009年2月のリーマンショックの傷も癒えない状況で、米国株の魅力に気づいて投資をしてきました。
また、極東の島国で弱小な個人投資家の私が、米国株の魅力に気づいて投資を始めたのが2013年5月です。世界の賢明な投資家から実に4年も遅れていたので、既に上の3段階では(2)の後方集団に位置していたと思います。
そして、2020年のアメリカではアプリを使った手軽な投資が流行り、新型コロナの景気対策の給付金で多くの人が米国株の投資を始めたと聞くので、恐らく2020年は既に上の(3)の段階に入っています。
(3)の「最後には、全ての人がその投資だけは今後も価格が上がり続けると思い込む。」という書きましたが、全ての人の期待に応えて上昇を続ける投資先など世の中にはありません。
長期的に魅力ある投資先の米国株でも、数年以内に大きく価格が下る局面が訪れてもおかしくないと思います。
(※ブームの終盤でも、すぐに下落が来るわけではありません。いつ下落がくるかは投資家でもわからないので、警戒しながら投資しています。)
失敗した後の起き上がり方が重要
ただし、この記事で伝えたいのは「米国株のブームは終盤だからやめておけ」ではありません。
投資をする以上は、どこかで損を出してしまう失敗を必ず経験します。その失敗でどう立ち直るかが、今後の投資でリターンを出せるようになるかどうかの重要な分岐点になります。
一度の失敗で「やっぱり投資は怖いものだ。やめておけばよかった」と考えるならリターンは出せずに終わります。「一度は失敗したけど、もっとうまくやれたはずだと」再び立ち上がる人だけが、その後の投資でリターンを手にできます。
一度大きな損を出して立ち上がった投資家なら、次の下落では安値になった株を購入できるように、好調な時期に投資資金を温存して下落に備えるような投資ができるようになるかも知れません。
経験は望んでいたものが手に入らなかった時に得られます。株価が順調に上がって「投資は簡単だ」と思っているうちは、気分は良いですが、残念ながら学びはとても少ないです。
私も投資をはじめた年にサブプライムローン問題起こり、リーマンショックで無事に大きな損を出しましたが、初心者のうちに失敗できたのは幸運でした。何十年も大きな失敗なく投資が成功し、リタイア後に取り返しのつかない失敗をした場合のほうが、最悪な事態を招くことになります。
そう考えると、初心者にまず洗礼を浴びせてくる投資の世界は、本当は良心的なのかもしれません。