空からお金降ってこないかな
全国の働きたくない皆さん、毎日お疲れ様です。毎日頑張りすぎていて、ついつい「あー、空からお金降ってこないかな」って考えることはないでしょうか。
平均して、日本中の人が1年に1回「あー、空から(以下略)」と願ったとすると、毎秒4回の日本人の願いが空に届けられる計算になります。
願いを聞き入れる空の上の神様も大変ですね。神様も「そういう話は地上で解決してくれないか」とため息が漏れていることでしょう。
近年は、そんな神に導かれた勇敢な市民が世界各国で、ベーシックインカムという制度を実験する動きが活発化しています。先日、起業家支援で世界的に有名なYコンビネーターが3年間かけてベーシックインカムの実証実験を実施することを発表しています。
この記事ではベーシックインカムとは何か、Yコンビネーターとはどんな組織なのかの説明をし、最後にベーシックインカムに対する私の考えを書きます。
ちなみに私の中で、ベーシックインカムを実施すると何が起こるかは既に結論が出ています。貧富の格差が拡大して、不満が溜まってベーシックインカム制度は維持できなくなるが結論です。
ベーシックインカムとかYコンビネーターの話は良いから、結論部分だけもう少し詳しく聞きたい人は、最終章の「ベーシックインカムは格差を生む」までスクロールをお願いします。
ベーシックインカムとは
ベーシックインカムは、最低限の生活を保証するために国民全員に毎月お金を配る制度です。働きたくない人は最低限の生活ができるし、更に収入を得たい人は意欲的に働くことで、労働意欲ある社会を目指そうというものです。
そのかわり今までの年金、雇用保険、生活保護などの国が運営していた社会保障は大幅削減か全廃される、というものです。
もらえる金額の規模感がわからないとなんとも言えないと思うので、具体例を出しますね。
2016年にスイスでは、ベーシックインカムを導入するか否かの国民投票が実施されましたが、その際に出ていた金額案の1つは成人に月28万円、未成年月額7万円でした。両親と子供1人の3人家族を想定した場合、28+28+7=63万円が支給されます。
世界トップレベルの所得水準のスイスだとしても、かなりしっかりした金額ですね。
ちなみに、このスイスの国民投票では77%の反対多数で否決されたため、実現しませんでした。税金の負担が大きいことと、経済競争力の低下が主な反対理由だったそうです。
加えて、フィンランドでも2016年から2018年でベーシックインカムの実証実験が行われていました。こちらは、失業者2000人を対象にし毎月7万円弱を支給したそうですが、実験者のストレスは減ったものの失業率に変化はなかったとのことです。
このように世界各国でベーシックインカムの取り組みの検討がされる中、アメリカでは起業家育成で定評があるYコンビネーターという民間組織がベーシックインカムの実証実験を行うことになりました。
Yコンビネーターとは
ITの仕事についている人でないと、なかなか日本でYコンビネータを知っている人は多くないと思いますが、アメリカで最も有名なIT起業家を育成する組織です。松下政経塾のIT起業家版のようなものですね。
Yコンビネータの授業は短期集中型の鬼のような厳しい合宿が有名ですが、あの出資者は過去にどんなトラブルがあるとか、起業する上でのかなり実践的な情報・ノウハウ・人的ネットワークを手に入れることができるようです。
Yコンビネータから生まれた起業は、民泊で有名なAirbnb、ファイル共有のDropbox、GMに買収された世界トップクラスの完成度を誇る自動運転車開発のCruise、その他IT業界の人ならみんな知っているGitlabやDockerがあります。
そのYコンビネータが、多くの出資者から資金提供を受けながら、アメリカの2つの州で合計2000人を対象にしたベーシックインカムの実証実験を行うことになりました。フィンランドの時のように失業者に限定せずに、人種・性別に関係なく毎月約11万円を3年間給付して、受給者の心理面の変化や家計の健全性、子供への影響、犯罪率への影響などを観察するようです。
アメリカの超一流の起業を排出するYコンビネーターがどのような成果が報告されるのか、途中経過を含めて楽しみです。
ベーシックインカムは格差を生む
ちなみに冒頭でもお話しましたが、私の中でベーシックインカムを導入した時の効果は結論が出ています。
まずベーシックインカムにより、格差が生じます。その後、富裕層の街と貧困層の街がわかれ、富裕層が次第にベーシックインカムを維持する高い税金に嫌気が差して国外に逃げられ、制度維持ができなくなり、いずれ廃止されると思っています。
ベーシックインカムで格差が拡大する仕組みはこうです。
- 働きたくない人は働かない。物価の安い街に引っ越すなど、支給金額内で生きる。
- 会社はベーシックインカムを当てにして福利厚生や賃金をカットするため、特殊なスキルがない替えがきく労働者は低賃金になる。
- 一方、高いスキルや大企業の経営などの豊富な経験がある場合には、人材獲得競争になり高待遇になる。
- 起業家も一定数の割合で増えるが、資金やノウハウをもらえる人的ネットワークを持つ一部の起業家の成功確率が高い社会に変化はなし。
- 1つの世代で開いた格差が、子供に受けさせる教育を通じて次の世代の格差を生む。
なお、このベーシックインカムの制度は結構な税の負担も大きいのですが、その負担は富裕層が多くを支払うことになります。それに嫌気がした富裕層は徐々に別の制度の国に移住し、ベーシックインカムの制度維持が困難になるのだろうと思います。
ちなみに、フィンランドのような1人につき7万円の金額だと、働きたくない人もまだ渋々働くため、社会に大きな変化は生じないと思います。ひょっとすると企業が福利厚生や賃金カットをいち早く実施するだけかも知れません。
厳しい現実ですね。
神様、「あー、空からお金」の件ですが、地上で解決するのはどうしてなかなか難しいみたいです。