前回までの記事で、金利が上昇した場合の米国株の下落リスクについて考えていきました。
>>予想外の米失業率低下で株価上昇も、やはり気になる金利上昇のリスク
一方で、私はゴールドも資産の一部として保有しているので、金利上昇がゴールドに与える影響についても、ここで考えていきたいと思います。
先に結論を書いておくと、2020年6月7日時点ではゴールドの下落についてはそれほど懸念しなくて良さそうです。実質金利(長期金利にインフレ率を引き算した値)が上昇するとゴールドの価格が下落してしまいますが、最近の実質金利の大きな変化はまだわずかに上昇した程度です。
しかし、もしも米国の景気が回復に向かっていくと予想するなら、その場合はゴールドよりも株のほうがリターンが良くなるはずなので、ゴールドの資産の一部を株に変えてリターンを狙いにいくのは「あり」かも知れません。
この記事のポイント
- 2020年6月7日時点で、ゴールドの価格の下落はそれほど心配するレベルに達していない。
- ただし、景気回復に来ていると思うなら、これからは株のほうがリターンが高くなる可能性が高い。リターンを取りに行きたいなら、ゴールドの一部を手放して、米国株に振り向けるのも手。
- 今後数年間で気をつけるべきは、FRBの量的緩和を縮小する場合。FRBが緩和縮小を示唆した2013年のバーナンキショックでは、実質金利が急激に上昇して金の価格も下落した。(米国株は金ほど影響を受けなかった)
ゴールドの価格は実質長期金利に影響を受ける
ゴールドの価格は、長期金利からインフレ率を引き算した実質長期金利と呼ばれる数字に強い影響を受けています。
ゴールドの価格の特徴
- 実質長金利(長期金利から期待インフレ率を引いたもの)が低下するほど、ゴールドの価格が上昇する
実際に実質金利とゴールドの価格をグラフ化してみると、2つの動きが反対方向にきれいに連動しているのがわかります。
実質金利を計算するのが面倒な方は、FREDと呼ばれるサイトで引き算済みのデータを提供しているので、毎日のデータを簡単にできます。
>>実質長期金利(期待インフレ率調整済みの10年国債利回り) – FRED
【経済分析】経済指標や金利データをグラフ化するFREDの使い方
アメリカの経済指標や金融データをグラフ化してみたみたいと思うことありませんか。この記事では経済指標をグラフ化するのに便利な、FRBセントルイス連銀のサイトFREDの基本的なグラフの使い方を紹介します。
実質長期金利はわずかに上昇
2020年5月末から、米長期金利が上昇傾向にあるという話を度々このブログではしてきました。
予想外の米失業率低下で株価上昇も、やはり気になる金利上昇のリスク
失業率は4月をピークに改善をしはじめ景気は底打ちをしたように見えるので、今持っている株はしばらく黙って保有するつもりですが、次のリスクについても少しずつ検討していかなければなりません。
一方で、ゴールドの価格に影響を与える実質長期金利はどうかというと、やはり長期金利につられる形で最近はわずかに上昇傾向にあります。
ただし、上のグラフを見てもわかりますが、実質金利の上昇幅はまだまだかなり小さいです。
大きく実質金利が上昇すれば、ゴールドは下落をするでしょうが、今はまだ歴史的な低金利の状態にあることは変わりないので、今の時点ですぐにゴールドを売るべき状況でもないようです。
2013年のバーナンキショック時に金価格は下落
今のようにFRBが金融緩和を継続して歴史的な低金利が続いている間は、基本的にはゴールドの急落は起こりにくいと思っています。
一方で、FRBの金融緩和を縮小するときには、金の価格の下落が起こることもあるので注意が必要です。
2013年5月には債権を買う緩和策(量的緩和)を縮小させる意向を当時FRB議長のバーナンキ氏が発言したことで、バーナンキショックと呼ばれる金利の上昇が起こりました。
2013年は景気回復の途中でインフレ率も十分上がっていなかったので、金利の上昇が実質金利の上昇を招き、金の価格が下落しました。
2020年の米国は景気の低迷に悩まされているので、まだまだFRBの金融緩和策は続くと思いますが、数年後に景気が良くなってからは金融政策の縮小とともに、今のゴールドのボーナス期が終わる恐れがあることはリスクとして覚えておいたほうが良さそうです。
さいごに
以上をまとめると、2020年6月の時点では、相変わらず歴史的な低金利の状態にあるため、すぐにゴールドを手放したほうが良いような大幅な実質金利の上昇は見られません。
ただし、今後もしも金利の上昇とともに実質金利も上昇すると考えたり、景気の回復期では株のほうがリターンが高くなると考えるならゴールドを手放すのもありかも知れません。
実際に下記の月別のリターンを比較表を見てみると、米国の景気が底を打ったと言われている2020年4月以降は株のほうがゴールドよりもリターンがよくなっています。
期間 | ゴールドETF (GLD) |
S&P500米国株ETF (SPY) |
---|---|---|
20年1月 | 4.5% | 0.0% |
20年2月 | -0.6% | -7.9% |
20年3月 | -0.2% | -12.5% |
20年4月 | 7.3% | 12.7% |
20年5月 | 2.6% | 4.8% |
これを見ると「ゴールドが下落するから」と理由ではなく、株のほうがリターンをあげられるからという理由でゴールドから株にシフトするのも「あり」かもしれません。
ゴールドから株に資金をシフトする場合でも、急がなくても特に問題ないと思っています。2020年の後半に一時的に株の下落は来ると思っている人なら、そのタイミングまでゴールドで保有して株にシフトするチャンスを伺うのも良いかなと思っています。それくらいの時間的余裕ならまだある気がしています。
20年6月時点のゴールドのスタンス
- ゴールドはすぐに売らなければならないほど、急激な実質金利の変化は起きていない。
- 株のほうがリターンを生むと考えるなら、投資資金をゴールドから米国株にシフトするのもあり。
- ゴールドから米国株にシフトする場合でも、株が一時的に落ちたタイミングを狙いたいのなら、その時までゴールドを保有して資金を待機していても問題なさそう。