これから先、アメリカを中心とする世界の経済で起こることを予め書いておこうと思います。
これらはアメリカと中国貿易戦争を過熱しようが、休戦しようが起こることだと思います。関税を掛け合う貿易戦争は、景気後退の根本原因ではなく、お互いの国の景気サイクルの時計の針を早めているだけだと考えているからです。
詳細はこちらを参照:【原因と結果】米中貿易戦争終結でも米国はリセッション入りするのか。
- (1)ドイツ、景気後退入り
- (2)ヨーロッパECB、金利引下げと量的緩和を再開
- (3)中国、景気減速し毎年のようにGDP目標値を大幅に引き下げる
- (4)アメリカ、景気後退前に株価が上昇してピークをつける
- (5)アメリカ、景気後退入り
- (6)アメリカ、景気対策のためにゼロ金利まで下げ、量的緩和を開始
- (7)アメリカ、国債が買われあらゆる年限でマイナス利回りになる
- (8)アメリカ、景気後退脱出後も日本のような低インフレ時代に突入。
- (9)アメリカをはじめとする先進国大規模な財政出動により、低インフレ時代を終える。
(1)ドイツ、景気後退入り
ドイツはおそらく先進国の中で、もっとも早く景気後退入りする本命だと思います。貿易依存度が高いドイツにとっては、世界的に貿易が減速している今の経済環境がどの国よりも厳しいものに感じているはずだからです。
2018年10-12月期、2019年4-6月期とドイツはマイナス成長に落ち込んでいます。景気後退と判定される2期連続のマイナス成長は回避していますが、まだ危機はさったわけではなさそうです。
ちなみに先進国の景気後退入りレースのダークホースは、EU離脱で混乱が続いているイギリスです。EUをどういう形で離脱するのかが読めないですが、展開次第ではドイツよりも先に景気後退入りもありえます。
(2)ヨーロッパECB、金利引下げと量的緩和を再開
ヨーロッパの中央銀行ECBは、最も難しい決断を迫られている中央銀行の1つです。
リーマンショック後から一度も金利を引き上げることもなく、量的緩和で中央銀行が買い取った大量の債権も処分も進まないまま、ドイツなどを中心に次の景気後退の影がちらつき始めています。
2019年9月でECBが何も手を打たないことはないと思われるので、このタイミングで金利引下げか、小規模でも量的緩和が再開される可能性があります。
追記:予想通り、2019年9月にECBは量的緩和を再開決定しました。
ECB包括的な金融政策を決定。マイナス金利深堀りや量的緩和を再開。
(3)中国、景気減速し毎年のようにGDP目標値を大幅に引き下げる
さて、米中貿易戦争の渦中にいる中国ですが、この貿易戦争がなかったとしても、この国は生産年齢人口の減少という苦しいターニングポイントを景気対策と借金で延命してる事情がありました。
中国国内の景気は年々減速していて、これからは毎年の様にGDP目標値を切り下げ必須の状況です。
中国国内の景気の減速についてはこちらを参照:
【結論】世界の減速の原因は中国だった。
(4)アメリカ、景気後退前に株価が上昇してピークをつける
景気後退入りする前のFRBは、金利引下げを実施します。実際すでに、2019年7月には利下げを実施しました。こうした金利引下げは株価の上昇を引き起こします。
今まで歴史を見ても、景気後退の数ヶ月前まで株価があがってピークをつけてから、不景気に突入する傾向が見られたため、おそらく今回の景気後退前にも株が上がります。
ただし、この株価のピークを狙って株を売るのは、思っている以上に難しいかも知れません。私はピークを読むのが得意ではないことを知っているので、既に半分ほど株を売って、その後価格が上がるはずの国債に資金をうつしています。
(5)アメリカ、景気後退入り
2019年にFRBが金利引き下げをしたため、景気後退入りのリスクは回避されたとの認識が市場では強いです。アメリカが景気後退入りする可能性はまだ完全に捨てきれていないと思っています。
アメリカが景気後退入りする時期については、一部の指標は2020年後半から2021年を予想しています。たぶん世界の国の中でも、アメリカはかなり遅くに景気後退入りするはずです。それだけ、アメリカの景気はまだまだ健全です。
しかし、ヨーロッパ・日本・中国とアメリカ以外の国が次々と景気が弱くなった場合には、グローバルで活躍する企業を多く抱えるアメリカ企業の景気は急速に鈍化する恐れもあります。思わぬタイミングでの景気後退入りしたときに慌てないよう、油断は禁物です。
(6)アメリカ、景気対策のためにゼロ金利まで下げ、量的緩和を開始
景気後退入りした場合ですが、一番困ることは中央銀行のFRBに打てる手が少ないということです。日銀やECBに比べたら金利の引き下げ余地は大きいですが、金利はリーマンショック前の半分程度しかなく、景気後退入り後にも直ぐにゼロ金利になる見通しです。
それでも景気対策が足りないので、リーマンショック時にお世話になった量的緩和も開始することが予想されます。
(7)アメリカ、国債が買われあらゆる年限でマイナス利回りになる
金利を引き下げる余地が少なく、すぐさま量的緩和が開始されるので、日本のように量的緩和は規模が大きいものになると思われます。そうなると、アメリカのあらゆる年限の国債はマイナス利回りになるまで、量的緩和が実施される可能性が高いです。
元FRB議長のアラン・グリーンスパン氏も、「アメリカ国債がマイナスになるのを防ぐものはなにもない」とアメリカ国債のマイナス利回りを予想しています。
アラン・グリーンスパン氏「米国債利回りがマイナスになるのを妨ぐものは何もない」
(8)アメリカ、景気後退脱出後も日本のような低インフレ時代に突入。
このような中央銀行主導の景気刺激策で、一旦はGDPもプラス成長に回復するかも知れません。しかし、おそらくその後に待っているのは、日本のような低インフレ時代です。
1929年ウォール街の大暴落後の1937年のアメリカの景気後退でも、バブル崩壊後に景気回復しないままリーマンショックを迎えた日本も、中央銀行主導の景気刺激策でGDPプラス成長に復帰するところまではできましたが、その後低インフレに悩みました。
この時期まで国債が買われ続けるので、景気後退前にリスク回避で買った国債はここまでは多少残して持っていて良いと思います。
参考記事:1930年代にますます似てきたアメリカの経済事情。
(9)大規模な財政出動により、低インフレ時代を終える。
歴史を紐解くと、このような低インフレ時代は戦争のような大規模な政府の支出拡大によって終わりを告げています。この大規模な財政出動が始まると、国債が売られて利回りが上昇するはずです。
このタイミングで国債を一気に株にシフトするなり、リスクオンの状態に持っていければ、資産を大きくすることができると思います。ただし、ここで気をつけるのはインフレ率がFRBの想定よりも上がりすぎていないかどうかです。
もしも、インフレ率の上昇が止まらないようだと、株ではなく金や不動産などのインフレに強い現物資産で、自分の資産を守らなければならない展開になるかもしれません。