最近あらためて市場の動きというのは、賢いなと感じます。
私などは、景気拡大のピークは過ぎ去ってから数ヶ月立たないと、それがピークだったことに気づけないのですが、市場は直ぐに価格に織り込んでいきます。
市場には自分よりも賢くて素早く判断できる投資家がたくさんいて、わかりやすくサインを送ってくれているのなら、私のような個人投資家はそれをもっと活用したほうが良いのではないかと考えさせられてしまいます。
この記事のポイント
- 市場には賢い投資家がたくさんいるので、かなり早い段階から明確にサインを送ってくる。
- たとえば、米国債市場は3月の時点でアメリカの景気のピークが近いことを織り込んでいた。個人投資家が経済指標で判断する場合には、数ヶ月遅れてしまう。
- 個人投資家は、もっと市場のサインを頼っても良いかも知れない。
アメリカの景気のピークをいち早く言い当てた市場
ある特定の分野に詳しい人達が世界中で編集しているWikipediaのようなサイトに掲載される知識の量は、個人運営のサイトでは到底かないません。
それと同じで、一流の投資家が世界中から参加している市場の目利きの能力は、個人投資家には到底かなわないなと感じることがあります。
たとえば、2020年後半から上昇を続けていたアメリカの長期金利が、2021年の3月でピークをつけて下落に転じたことがありました。
3月はアメリカの景気回復が始まった時期でした。インフレ率も大きく伸びはじめたのに(インフレ率が上昇すれば国債には不利なのに)、どうして長期国債が買われて長期金利が下がるのか、当時は不思議でなりませんでした。
2021年3月に長期金利が低下した理由
2020年からの長期金利の上昇があまりにも急だったので、一旦調整が入ったのかとも思いました。
しかし、今なら別の答えが簡単に見つかります。
おそらく、アメリカの経済成長率のピークが近いことが、市場には3月の時点でわかっていたのだと思います。
景気の拡大スピードがピークを超えるまでは長期国債は売られて金利が上昇しましたが、ピークを超えた後は投資家は守りを固めるために長期国債を買い直して、長期金利が下がったようです。
市場と個人投資家の判断の早さの違い
市場は3月の時点で、アメリカの景気のピークが近いことを見抜きましたが、個人投資家が同じ時期に景気のピークを判断するのはかなり難しいです。
たとえば、個人消費(前年比)は2021年4月にピークをつけましたが、私がピークをつけたと判断できたのは6月でした。
上のグラフを見ると4月がピークだったとわかりますが、通常はそれがピークかどうかを見るためには5月にデータが悪化していることを見ないと判断できません。
そして、5月分のデータが発表されるのが6月なので、4月のピークから6月まで2ヶ月も判断が遅れることになります。
このタイムラグを考えると、市場がピークだと判断する早さと正確さはすごいの一言につきます。
市場のサインを読む
やはり、個人投資家では、プロの投資家がひしめく市場の判断力には、どうしても負けてしまうようです。
それなら私のような個人投資家は、市場が送ってくれるサインをもっと頼っても良いのではないかと考えさせられます。
例えば、10年国債を買っている投資家が想定している長期インフレ率(ブレークイーブン・インフレ)はたった2.3%です。
これを見る限り、(少なくとも今のところ)市場はアメリカのインフレが長期的な問題にはならないと考えているようです。
昨日の記事でも書いたように私はアメリカのインフレ率の上昇をかなり警戒していますが、市場のサインを信じるなら、まだその危険は差し迫っていないようです。