トランプ大統領やFRBのパウエル議長から批判を受けていた、2020年に発行予定のFacebookの仮想通貨Libraですが、Facebookのプロジェクトの責任者であるデビット・マーカスは、当局の承認を得られるまでLibraをリリースしないとの考えを示しました。
多くのメディアで取り上げられているので、このニュースを既に知っている人も多いと思います。
しかし、より重要なポイントは、適切な規制を受けてでもFacebookを始めとする米国がデジタル通貨や次世代決済を主導しなければ、他国が主導することになるとデビット・マーカスが主張したことです。
先進的な人々には、デジタル通貨を使った新しい決済技術の波は遅かれ早かれ世界に広まることが見えていて、その波にいかにして安全に乗るかに焦点が移っています。
Facebookの仮想通貨責任者、適切な規制を受けると証言
デビット・マーカスは7月16日の米上院銀行委員会の公聴会に出席予定で、証言原稿の中で、適切な承認を受けるまでLibraを発行しない意向を明らかにしています。
Facebook will not offer the Libra digital currency until we have fully addressed regulatory concerns and received appropriate approvals.規制当局の懸念に十分対処し、適切な承認を得られるまでは、FacebookはLibraを公開しない(デイビット・マーカス)
FRBのパウエル議長はFacebookの仮想通貨発行には消費者保護と規制の観点で十分な規制をかけないといけないという考えを示していましたが、デイビット・マーカスはその考えに賛同して応えたものになります。
FRB議長がFacebook仮想通貨を牽制も、過度に規制すべきでない理由。
また、Libraの意義について「決済ツールであって、投資対象ではない」と改めて発言して、多くの人が抱いている「価格乱高下する投機の対象としての仮想通貨」というイメージや、「Facebookが通貨を発行する銀行になろうとしている」という誤解を払拭しようとしています。
【Facebook仮想通貨】トランプ大統領が犯している2つの誤解。
次世代決済:アメリカが主導しなければ他国が主導する
しかし、デビット・マーカスの証言原稿で、恐らく最も重要なのは次の一文です。
「フェイスブックがこの取り組みを米国で始めることを誇りに思う。デジタル通貨や決済分野でのイノベーションを米国が主導しなければ他国が主導するだろう。米国が行動しなければ他国に管理されたデジタル通貨が間もなくできる」(日本語訳はロイター。太字は当ブログで付与。)
プレゼンではキーメッセージ明確にせよと言われますが、上の一連の文こそがデビット・マーカスのキーメッセージであり、今回の証言台に立つ目的です。
この主張は、このブログで繰り返し指摘した事と完全に一致します。Libraのような次世代の決済技術はFacebookや他のアメリカ企業がやらなければ、中国かインドかアフリカの別の国が世界の決済網を構築することになります。
こうした変化に、世界の中でも先進的な人々は気づき始めています。7月17-18日にフランスで開かれれるG7の財務相・中央銀行総裁会議では、仮想通貨が議題に上がる予定です。それに先立ち、フランスの中央銀行のヴィルロワ・ド・ガロー総裁はLibraに対して、どのようにすれば、利便性を保ちながら、安全を確保できるか議論をしたいと発言しています。
We want to combine being open to innovation with firmness on regulation. This is in everyone’s interest
「イノベーションに対してオープンであることと、規制を徹底させることを両立させたい。これはすべての人にとっての利益につながる(フランス銀行ヴィルロワ・ド・ガロー総裁)
先を見据えた人々にとって、デジタル通貨を使った新しい決済技術は禁止するべきではないし、禁止すれば自国の不利益になることに気づいています。避けられない技術革新の流れならば、それをいかに安全に便利に活用するかに焦点が向けられています。
やはり、既にパンドラの箱は開いていると言えます。