アメリカでは2024年にも3回の利下げがあると言われています。
FRBも市場も利下げを考えている理由ですが、どうも現状では政策金利は高すぎて引き締めすぎの懸念があるようです。
テイラー・ルールというものを使って、今の状況を確認していきます。
この記事のポイント
- テイラー・ルールは政策金利の適切な水準を推定する式
- 式に入力する値は推定値を入れないといけないので正確な金利水準を出せるわけではないが、アトランタ連銀には妥当な設定で簡単にテイラー・ルールの値を算出ツールがある。
- アトランタ連銀のツールでは2023年第4四半期で既に政策金利はテイラー・ルールが示す水準を超えている。
利下げを考える背景
このブログを書いている時点で、市場は6月の利下げを織り込んでいます。
そして、3月のFOMC後に発表された経済見通しでも年内に3回の利下げが示されるなど、FRBも同じく2024年の利下げをするつもりのようです。
ここでふと疑問と浮かぶのは、市場もFRBもなぜ利下げにこれほど肯定的なのかです。「アメリカの景気後退が近いから利下げをしないといけない」というわけではありません。
FOMCの経済見通しでGDP成長率は低い値になっているはずですが、そうはなっていません。2026年までの成長率は長期見通しよりも高い2%台が予想されています(下図)。
また、FRBだけではなく市場も景気後退を予想していません。
通常の株式市場なら景気後退が近づけばその半年前くらいからS&P500は下落に向かい、債券市場では格付けの低い債券から高い債券へと資金が移るはずですが、そうした動きは見られません。
テイラー・ルールについて
それなら、一体FRBも市場もなぜ利下げをしないといけないと思っているのでしょうか。
答えは簡単で現時点ですでに政策金利が高すぎで、強い引き締め状態となっているからです。
適切な政策金利を推定する方法にテイラー・ルールというものがあります。その数字を見るとすでに(前提条件にもよりますが)2023年第4四半期くらいから引き締めすぎの状態に入っていることがわかります。
テイラールールを使って自分で適切な政策金利の水準を計算するには大変なので、ここではアトランタ連銀のサイトを使って楽をしてみたいと思います。
アトランタ連銀のサイトではテイラー・ルールを算出するための設定をいじれますが、デフォルト設定でもそこそこ妥当だと思われる3パターンのテイラー・ルールの数字を簡単に算出できるので、3つともグラフに表示させてみました。
これを見ると、どのパターンでも2023年第4四半期には既に政策金利は高くなりすぎているという結果になっています。
インフレ率が下がれば、テイラー・ルールを用いた適切な政策金利も下がります。今は2023年第4四半期よりもインフレ率は下がっているので、引き締めがより厳しくなっていると思われます。
現時点ではアメリカ経済は順調に景気拡大をしているように見えますが、このままでは引き締めすぎになってしまうことを市場もFRBもわかっているはずです。
なので、利下げは遅かれ早かれ必要だという認識になっているのでしょう。