年末にセントルイス連銀がわかりやすくて面白いレポートを出していたので、その内容を紹介したいと思います。
過去に景気後退が近づいている時には、前月と比べて景気動向指数が悪化した州の数が増える傾向が見られ、全50州のうち平均26州を超えた時に景気後退に突入していたといいます。
また、一時的にかもしれませんが、景気動向指数が悪化した州は2022年10月に既に26州を超えていたようです。(※11月データでは改善が見られたようですが、今後安定して26州を超えてくるかは見ものです。)
この記事のポイント
- セントルイス連銀によると過去6回の景気後退では、「景気悪化」を示す州が26を超えると景気後退に突入していた。
- 2022年10月に既に26を超えてるので、景気後退がかなり近づいている兆候が見られる。
景気悪化が26州を超えるとアメリカ全体が景気後退
大事なことはほとんど冒頭で書いてしまったので、内容がわかった人はページを閉じてしまってかまいません。
ここからは補足データを紹介する程度になります。
まず、FRBでは毎月アメリカの州ごとの景気動向をまとめたものを「州別の景気動向指数(State Coincident Indexes)」として発表しています。
例えば、上の図は直近三ヶ月間の州ごとの景気を示しています。景気が良ければ緑、悪ければオレンジになるという感じです。
このような州別の景気動向指数を使って、セントルイス連銀は「全50州のうち、いくつの州が景気悪化を示したらアメリカの国全体で景気後退と判定されるのか」を調べています。
過去6回の景気後退でわかったのは、平均して景気悪化した州が26州を超えたら景気後退となるようです。
時期 | イベント | 前月より景気悪化した州 |
---|---|---|
1980年2月 | インフレ後期 | 30州 |
1981年8月 | インフレ後期 | 30州 |
1990年8月 | 湾岸戦争 | 26州 |
2001年4月 | ITバブル崩壊 | 24州 |
2008年1月 | 世界金融危機 | 9州 |
2020年3月 | 新型コロナ | 35州 |
平均 | 26州 |
近づく景気後退
では、今のアメリカはどうなっているのかを確認してみます。
「50州のうち、いくつの州が前月より景気悪化を示しているか」を2022年10月分まで集計したのが次のグラフになります。
注目なのは2022年10月の時点(グラフ一番右)で27を記録して、過去6回の景気後退突入時の平均の26を既に超えていることです。11月には景気は少し改善に向かったようなので、これは一時的な減少だったのかもしれませんが、アメリカに景気後退が近づいていることを示すデータがまた一つ増えたことになります。
最近、アメリカの景気後退が近いというデータはそこかしこにあります。
そしてFRBのエコノミストたちからもこうしたレポートを出していることから見てもアメリカの金融引き締めの終わりは近く、2023年はパウエル議長が言うような金利を長く高い水準に据え置く展開にはならないのだろうと思います。