昨日のブログでは適切な政策金利の水準を推定するテイラー・ルールというものを紹介しました。
テイラー・ルールが示す金利よりも今の政策金利は高いので、アメリカは引き締め過ぎの状態にあり、遠からず利下げが必要になるだろうという話をしました。
それと矛盾するようですが、今のアメリカは金融ストレスが極めて低い(金融引き締めになっていない)というデータも存在します。
これは一体どういうことなのでしょうか。私もまだわからない点も多いのですが、現時点での考え方を書いていきます。
この記事のポイント
- セントルイス連銀の金融ストレス指数は現時点でかなり低い水準。まるで金融引き締めなどしていないかのような状態。
- しかし、こうした状況は世界金融危機前にも見られた。当時は政策金利がテイラー・ルールが示す金利を政策金利が超えてしまった後に、金融ストレスが増加に転じた。
- 2024年現在は金融ストレスは低いが、すでにテイラー・ルールの示す政策金利水準を超えている点には注意。
低位に沈む金融ストレス指数
冒頭でも話をしましたが、「今のアメリカって本当に金融引き締めをしているんだっけ」と疑問になるようなデータも存在します。
例えば、セントルイス連銀が発表している金融ストレス指数を見てみると、今はかなり低位に位置していることがわかります。
この指数の見方はゼロだった場合には金融ストレスが正常な状態を示し、プラスなら高ストレス、マイナスなら低ストレス状態であることを意味します。
今は大きなマイナスをつけており、金融市場がかなり安定しているような印象を受けます。
昨年まで大きく政策金利は引き上げられ、量的引き締めもまだ続いているというのに、この低ストレスな状態はどのように読み取ればいいのでしょうか。
特に、昨日触れたテイラー・ルールでは政策金利は引き締めすぎという判定が出ているのに、これらは矛盾しないのでしょうか。
世界金融危機を例に
さくっと調べてみると、景気サイクル終盤でも金融ストレスが低い状態が続いていた例は過去になかったわけではありません。
以下は世界金融危機(グレーの時期)前からの金融ストレス指数ですが、かなり直前になるまで大きなマイナス圏を推移していたことがわかります。
上のグラフで金融ストレスが上がり始めたのは2007年8月ですが、それよりもわずかに早く2007年第2四半期にはテイラー・ルールで引き締め過ぎという判定が出ていました。
つまり、短い時期ではありますが、テイラー・ルールが「引き締めすぎ」と判定している一方で、金融ストレス指数は「低ストレス」という今回と同じ状態はあったようです。
この例と「政策金利の悪影響は遅れてやってくるもの」という特徴をあわせて考えると、現時点で金融ストレスが低くても、テイラー・ルールが「引き締めすぎ」と判定してるような状態に入っているなら、そのうち金融ストレスが上昇する局面はあるのだろうと思います。
何より私もよりも賢いと思われるFRBや市場が年内の複数回利下げを見通していることから考えても、テイラー・ルールを超えている今のままの金利が続くのはまずいのでしょう。
よって、アメリカは引き締めすぎによる悪影響が今後出てくる恐れはまだ十分にあると思うので、私はまだ米国株に強気になれません。