1月中旬からアメリカ企業の決算を毎日のように眺めていると、いたるところにコロナ特需の反動を見ることができます。
コロナ特需の反動の例としては、2020年にあれだけ売れたコンピュータや半導体が最近では売上低迷に悩まされていることです。
>>マイクロソフト、業績見通しさえず株価下落(23年1月25日)
コロナで需要を先取りしてしまった企業がこれから一番困るのは、好調時に雇いすぎて人件費がかさんでいることです。
この記事では、コロナ特需で雇用を増やしたのはどのような業界なのかを調べます。そして、今後はそれらの業界で雇用がどの程度減るのかを見ていくつもりです。
この記事のポイント
- 2020年2月から2022年12月のアメリカで雇用が増えたのは、「流通」と「プロシェルショナル・ビジネスサービス」の業種。
- ネット販売の拡大から倉庫・宅配・トラックの雇用が増え、コロナ流行期のデジタル活用推進でITエンジニアやコンサルタントが増えてプロフェッショナル・ビジネスサービスも雇用が増大した。
- 今後、人員過剰になった分野の雇用減少は要注意で、その他の業界にも雇用削減が波及するなら要警戒。
2020年から大きく雇用を伸ばした業種
今のアメリカはコロナからはじまった景気サイクルの中にいます。
コロナでは暮らしに大きな変化が生まれてしまったので、雇用も大きく膨れ上がった業界がいくつかあります。
2020年2月から2022年12月までの雇用数を調べてみると「流通」と「ビジネスプロフェッショナルサービス(表内での表記はビジネスサービス)」が、コロナ前から190万人分も雇用を増やしていることがわかります。
流通の中でも特に増えているものを調べると、「倉庫」「宅配」「トラック運転手」などの雇用が増えていることがわかります。間違いなく、この背景にあるのはネットショッピングの流行です。
また、ビジネス・サービスの中で増えたものを見てみると、「ITエンジニア」「コンサルタント(ITコンサルタントを含む)」などが増えていることがわかります。こちらは、コロナ流行時でのコロナでデジタル活用が進んだことで雇用が大きく伸びた模様です。
つまり、今回の景気サイクルではネットショッピングとテクノロジー企業が雇用を伸ばしたようです。
苦しい時期を迎えているネットショップとテクノロジー企業
ネットショップもテクノロジー企業も利益拡大が続いているなら、雇用が増えても問題はありません。しかし、冒頭でも話したようにこれら企業はコロナの反動を受けて、利益が急速に鈍化しています。
なので、テクノロジー企業では既に多くの企業で好調時の雇いすぎが問題視されて、レイオフがはじまっています。
今まで雇用した人数を考えれば、1月のテクノロジー企業のレイオフの発表の約10万人はそれほど大きくない数字ですが、この兆候が続くなら要注意です。
また、下の図で「倉庫」「宅配」「トラック運転手」の雇用者数合計の変化を見ると、既に伸びは止まって減少に転じている点もあなどれません。
コロナ特需が収まって業績が急激に悪化している流通業やテクノロジー企業で雇用は縮小に向かっていますが、もしも別の業界にも雇用削減が飛び火している様子が見られたら警戒レベルを引き上げないと行けないかも知れません。(今のところ、目立った飛び火は見られません)
さいごに
この記事では、コロナ特需でネットショッピング関連企業とテクノロジー企業の雇用が急増したことを確認しました。
そして、コロナ特需が去った今はこれらの雇用が減少にする方向に向いつつあるようです。今後のレイオフがコロナで増えた雇用のほんの一部で済んだり、別の業界にレイオフが飛び火しなければアメリカの景気悪化は深刻にはならないかも知れません。
蛇足なのですが、1つだけ心配な点を書き残しておきたいと思います。
世の中にはネットショッピングをやっていて、なおかつテクノロジー企業の側面を持っている企業も存在します。その筆頭がアマゾンです。
アマゾンは他のGAFAMとの比較ても、従業員数を大きく増やした企業の一つです。
この企業がつまづくと、大きな追加のレイオフが発動される恐れが出てくるので、今週発表されるアマゾンの決算を注目したいと思います。