シンガポール経済の変調
前日、イギリスのGDP成長率はマイナスに陥ったニュースを取り上げました。
景気後退にリーチがかかったイギリス。4-6月期GDPは予想外のマイナス0.2%成長。
不安な点を上げればキリが無いですし、発展途上国に目を移せばもっと悲惨な例がいくらでも有るのですが、2019年第2四半期のGDP成長率で変調をきたしている主要な国を調べた結果、気になる大幅な減速が見られたのはシンガポールでした。
イギリスの場合は、EU離脱に関わる一時的な混乱で2019年第2四半期の投資が落ち込んでいる要因がありましたが、イギリスと違って、シンガポールのつまずきは一時的にとどまらない恐れがあります。
米中貿易戦争やイギリスのEU離脱などで大国の混乱が目立っていますが、こうした大国は体力があるのですぐには景気後退入りはしません。その前に小さな新興国が先に影響が出始めるだろうと思っていたところに、シンガポールの変調が見られています。
世界のGDPにいよいよ景気後退の影が映し出されてきたかも知れません。
脱線:ベネズエラの経済はもはやカオス
ちなみに本題のシンガポールに行く前に、ちょっとだけ脱線してもいいでしょうか。
2019年現在で、経済状態が悲惨な発展途上国で私が個人的に最も気になったのはベネズエラです。
ベネズエラの2019年の状況は原油価格の下落と政治の混乱で、経済が大きく低迷していますが、その様子をジェトロのサイトはわかりやすくまとめていました。
その内容をかいつまむと、2019年のベネズエラの様子は次のような感じです。
- 5年連続マイナス経済成長
- 5日におよぶ全国停電。
- 169万パーセントのインフレ
- 3年間で総人口の1割(300万人)以上の国民が国を脱出(!?)
- 2019年1月以降は政治の混乱で大統領が2人になる(!?)
ベネズエラ先輩、さすがです。。
想像をはるかに超えるレベルを見せつけられました。最後の方の国民の脱出とか大統領が2人とかは、何が起こっているのか理解が追いつきませんでした。
まあ世界は広いので、色んな事が起こりますよね。
心配なシンガポールの景気減速
さて、気を取り直して本題に戻りましょう。
シンガポールの変調が見られたのは2019年第2四半期のGDP成長率からです。7月12日に発表されたGDP速報値では、予想の前期比0.50%成長を大きく下回る、マイナス3.40%成長でした。これは、約7年ぶりの大幅減でした。
また8月13日にはGDPの改定値が発表されて、0.1ポイント改善してマイナス3.3%成長となったものの、同時に発表された2019年のシンガポールの成長率は予想は1.5-2.5%から、0-1%へと大幅な引き下げが行われました。
もともとの1.5-2.5%の成長率ですら10年ぶりの低い伸びと言われていましたが、それすら達成できない見込みです。
過去2年間シンガポール経済を引っ張ってきたのは電子機器の生産でしたが、5月には6カ月連続減少を記録し、輸出も直近産年間で3年余りで最大の落ち込みを記録しています。
冒頭でもお伝えしましたが、恐らくシンガポールの場合はイギリスと違って、一時的な落ち込みではないです。牽引役の電子製品や輸出が落ち込んでいることから、おそらくは景気のサイクルが後退期に差し掛かっている可能性が高く、輸出が減っているということは輸入国の内需が弱いので、この流れは他の新興国に連鎖する可能性があります。
少しずつではありますが、世界の景気の変調が経済指標にも見え始めてきた気がします。