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シラー教授「次の景気後退は数年来ないか、来てもマイルドなものになるかもしれない」

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楽観的になったロバート・シラー教授

ノーベル経済賞受賞者の受賞歴を持つイエール大学ロバート・シラー教授は、アメリカの景気に対する考えをより楽観的に変えつつあるようです。

2019年3月にはシラー教授が作った景気指数(CAPEレシオ)が悪化をしめして、今後18ヶ月に以内に景気後退が起こる確率は50%になると悲観的な意見をしていたのですが、今では「今度数年、景気後退は起こらないかもしれない。起こったとしても、マイルドな景気後退になるかもしれない」と言っています。

おや、これは一体どういうことでしょうか。

シラー教授が考えるナラティブ経済学とは

シラー教授が具体的にどんな主張をしているかを理解するために、最近のシラー教授の活動についてお知らせしたいと思います。

シラーさんは、行動経済学という人間の行動心理を扱う分野を専門にしていますが、今年になって「ナラティブ経済学」という本を書きました。

その本の内容は「ヒトはある物語(ナラティブ)に取り憑かれると、それを実現するように行動する」という話です。日本語でも「言葉にすれば実現する」とか聞いたことあるかと思いますが、それと似たようなものかなと思っています。

よく景気後退前に見られる不景気の予兆も、「予兆が出たから、これから不景気になるのだ」という物語(ナラティブ)にヒトが取り憑かれて、不景気を実現してしまうという説を、最近シラー教授は唱えています。

シラー教授が好調な経済が続くと考える理由

ロバート・シラー教授

そして、今アメリカの個人消費が好調なのは、トランプ大統領がアメリカ国民のモデルとなって贅沢な消費をするイメージをアメリカ国民に与えているので、贅沢なナラティブにとりつかれた一般人が消費をしていると言います。

トランプ大統領は大型の減税を実施した実績がありますが、それにくわえてトランプ大統領自身が良いナラティブ(物語)を提供しているから、今のアメリカの経済が力強いものになっている。それならば2020年の大統領選挙も賽銭する可能性が高いとシラー教授は予想しているようです。

そうなったときには、向こう3年間は景気後退は起こらず、もし起こったとしてもマイルドなものになると主張しています。

ナラティブ経済学は正しそうだが

正直、シラー教授がトランプ大統領の存在を理由に景気を強気に見る話を聞いたときに、何か違和感を感じがしました。

たぶん、ナラティブ経済学が主張していることは正しいと思っています。過去のシラー教授の研究成果の指標が「景気後退が近い」と言っているにも関わらず、「ナラティブ経済学」という新しいアイディアにシラー教授はすっかり取り憑かれてしまって景気を見る目を180度変えているので、教授自身が身を持ってナラティブ経済学を体現しているように見えます。

だから、「ヒトは信じた物語を実現させるように行動する」という話はたぶん本当です。

ただ、私が違和感を感じたのは、アメリカの景気に一番大きく影響を与えるナラティブ(物語)はトランプ大統領の存在なのでしょうか。アメリカ以外の、ヨーロッパも日本も中国も景気が減速する中で、アメリカもそれに飲み込まれるという世界規模な物語よりも、大統領たった一人の物語のほうが強いのかがわかりません。

ひょっとしたら本当にトランプ大統領の存在がアメリカの消費を促しているのかもしれませんが、もっと景気に重大な影響を与える別の物語がある気がしています。

もしも、ナラティブ経済学を信じる場合は、どのナラティブが世の中の人々の心を捉え得ているのか、「景気回復」なのかそれとも「景気後退」なのかを追いかける必要がありそうです。


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