前回の記事では、FRBや米政府の景気刺激策が続く限り、米国株にしばらく投資して良さそうという内容を書きました。
FRBと米政府の下支えが続く限りは、米国株に強気。
最近は米中の対立に関するニュースが増えていますが、長期投資家として私が注目するのは米中対立ではなくFRBの金融緩和と米政府の景気刺激策です。これから米中対立やウイルス再流行などで株価が下落する局面があると思いますが、これらの一時的な株価の低迷も結局はFRBや政府に支えられて回復すると思っています。
いま振り返ると、誤解を招きやすい内容だったと思います。
「米国株は下落なんかしない。ドンドン上がる」と言っているわけではないです。
2020年の後半はさまざま要因で株価は急落するかも知れないけれど、米政府やFRBが景気刺激策を継続するなら、一時的な株価の急落を乗り越えて数年後は今以上に株価が上がるシナリオに賭けて、米国株に投資するという考えを書いています。
つまり、これから大きな株価の低迷があったとしても、それらは基本的に耐える覚悟です。耐えた後、数年後にアメリカの本格的な景気回復が実現したら、そこまで大きくないリターンが高い確度で得られることを期待しています。
この記事では、このような考えに至るまでに考えたことを紹介します。
この記事のポイント
- まず、どんなシナリオに投資をするかを考えた。
- 「高い確率で起こりそう」で、なおかつ「難しい相場を読むスキルや特定の専門性を必要としないシナリオ」として、アメリカ経済の本格回復に焦点をあてた。
- 短期間で完結するシナリオは予想が難しいが、すぐに結果が出るので投資資金の効率が高い。一方で、長期シナリオは予想が比較的簡単だが、資金効率が低い。
どんなシナリオで勝負するか
投資をする上で、「どんな未来(シナリオ)に賭けるか」を決めるのは、重要だと個人的には思っています。
といっても、ほとんどの投資家は無意識のうちに既にやっています。
「長期的にアメリカ株のほうが、日本株より高いリターンが得られる」というシナリオに賭けているからこそ、このブログの読者の多くはアメリカ株に投資をしています。
一般的に、短期で完結するシナリオでは予想が難しい一方で当たるとリターンが高く、長期のシナリオではその反対の事が起こります。
- 短期シナリオ:予想は当たりにくいが、当たれば短期にリターンが得られて資金効率が良い。(例:新型コロナウイルスのワクチン関連銘柄で投資する)
- 長期シナリオ:予想は当たりやすいが、リターンが得られるまで時間がかかり効率が良くない(例:人口増加を見越した経済発展を予想して、インド株を買う)
2020年5月時点の具体的なシナリオ例
この記事を書いている2020年5月時点で、投資シナリオをいくつか考えると、次のようなものが浮かびます。
- (1)新型コロナウイルス流行後に下落した米国株の回復が急すぎるので、今後は米国株が下落する展開。
- (2)新型コロナウイルスのワクチン開発をすすめる企業の株価が上昇する展開。(もしくは、ワクチンへの期待で高値になりすぎている株が下落する展開)
- (3)数年かけてアメリカが2020年から始まった景気低迷を抜け出して、株価が20年3月の最高値を更新する展開。
(1)短期の米国株下落シナリオ
1つ目の米国株が割高になっているという話は、いまや毎日誰かしらが言うほど有名です。最近では、米大手銀行のJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOも割高の可能性を発言しています。
>>ダイモン氏やフィンク氏が警鐘、最近の米株高は行き過ぎた可能性(ブルームバーグ)
実際に私も20年5月の時点で米国株は割高に見えるという記事を書いています。
米国株がやや割高に見える理由。今月はゴールドETF購入を検討。
何か米国株が割高に見えて仕方ありません。単なる気の迷いかもしれませんが、今月は株の購入を1回見送ってゴールドにするつもりです。この記事では、最近の米国株がやや割高に見える理由と、ゴールドはまだ上昇すると考えているのかについて書きます。
実際に、投資家のジェフリー・ガンドラック氏は少額ながら、米国株が下がることに賭けて実際に投資しているとも聞きます。
ただ、実際にやってみると株が低迷することに賭ける投資は難しく、相場を読む高度なスキルが求められます。
これから下がると思って、投資資金を温存してみたら、なかなか下がらなかった経験をした人は多いはずです。実際に私も、2018年10月から株の追加投資を止めてましたが、本格的な株の下落がきたのは2020年3月で大きく読みを外しました。
下落を予想する場合、株に投資せずに現金を保有したり、株が下落することで儲かる商品を買ったりしますが、これは長期で保有していると株のリターンに負けるので、株の予想は短期間で言い当てる必要があります。
ただし、私にとってはタイミングよく株の下落を言い当てるには、スキルが足りない気がして敬遠しました。
(2)ワクチン関連株に投資するシナリオ
新型コロナウイルスのワクチンを開発する企業には世界中の注目を集まっていて、有望企業を見抜けるならばワクチン関連株に投資するのも良い考えだと思います。
また、ワクチン関連企業に過剰な期待が集まっていることが見抜けるなら、これらの株が下落することに賭けるシナリオもあります。
ただ、ワクチンに関しては私は全く専門分野ではないので、一部の投資資金でこちらも自分の資金を投資するメインのシナリオとして敬遠しました。
(3)数年後には米国経済が復活するシナリオ
私が今回選択したのが、数年後に米国経済が復活するシナリオです。
高度なスキルや専門性が必要がないものという軸を使って、3つのシナリオの中から消去法で選択肢を落としてきましたが、消去法でなくてもこの選択肢を選んだと思います。
投資家の好みにもよりますが、私は資金効率が低くても長期的にかなり高い確率で発生するシナリオに投資することが好きです。
1つ目の株の下落のシナリオも、2つ目のワクチンの投資シナリオも、半年から1年程度の比較的短い期間の話で、一方で米国経済が本格的に回復するシナリオはそれらよりも長い期間で起こることです。
一般的には、短期的な予想よりも、長期的な予想のほうが当てることは簡単です。
2020年2月にアメリカ株は最高値をつけてから、新型コロナウイルスの流行の影響を受けて下落しましたが、このまま20年2月の最高値を一度も超えることなくアメリカ株が低迷し続けるとは、あまり考えていません。数年後には最高値を更新する可能性は高いと思います。
確実性を考えると「数年後に米国経済が復活するシナリオ」にかけるのが、一番私の好みにあっています。
最後に
この記事では、自分がメインになる投資シナリオをどう決めるかというお話してきました。
投資家の好みによりますが、私は「数年後に米国経済が復活する」未来が一番確実に起こりそうだと考えて、メインの投資シナリオに選んでいます。
その代わり短期的に大きな株価の下落があった場合でも、数年後には株価が上昇していることを信じて、株価が下落しても米国株の投資を続けることになります。
「下落が起こるかも知れないのに、ただただ下落を耐えるのはシンドイ」と思う人もいると思います。その場合は、「数年後に米国経済が復活する」シナリオをメインにしつつ、短期的な下落シナリオにも備えて一部の資金を残しておくという方法があります。
実際には私は5月に米国株の保有比率を引き上げましたが、下落にも備えて現金も残しています。
また米国株の上昇のシナリオに期待して投資する場合でも、個別銘柄で投資する人なら更にどんな市場トレンドが強くなりそうか見極めて投資するのもいいアイデアだと思います。
注目している市場トレンドと銘柄
- クラウド利用の拡大:アマゾン、マイクロソフト、AMD、インテル
- 電子決済の拡大:マスターカード、ビザ、Paypal
- 自動運転など移動サービス:グーグル、Lyft
- 世界的な糖尿病患者の増加:ノボノルディスク
- 世界的な人口の増加:P&G、ジョンソン&ジョンソン、コカコーラ、ペプシコ、スタバ、マクドナルド
私が今後も確実性が高いと思っている市場はクラウド・コンピューティング市場です。
具体的にはアマゾンやマイクロソフト、さらにデータセンターに大量の半導体を供給するAMDやインテルなども恩恵を受けると思っていて、これらの銘柄の保有比率は他の銘柄より高くても良いかなと考えています。