このブログでは最近アメリカの景気に応じて、どの業界の株に投資したら良いのかを意識するような記事を書いています。
たとえば、2021年の9月時点ならアメリカの景気回復の勢いがピークを過ぎた後でも株価を伸ばしやすい、ヘルスケア業界株や生活必需品株が狙い目といった具合です。
しかし、業界株ETF(1つ買うだけである業界の企業の株に幅広く投資できる商品)の毎月のリターンを見た人からは、「業界株が調子良かったり悪かったりで傾向がわからない」、「毎月これだけ変化が大きいと調子が業界に上手く切り替えるのは不可能に見える。結局S&P500でいいのでは」という声もよく耳にします。
たしかに、業界株の好不調を把握しにくいのは事実です。
なので、この記事では、データを見方を工夫して、業界株の好調と不調をパッと見てわかるようにしたいと思います。
この記事のポイント
- 業界株に投資する目的は主に「S&P500のリターンの上回るため」。
- この目的にそって、「業界株がS&P500よりもどれだけ多くリターンをだしているか」という視点でデータを整理し直すと、景気サイクルに合わせて業界の好調不調がはっきりと見えてくる。
業界株への投資
冒頭で話をした「業界株が調子良かったり悪かったりで傾向がわからない」という問題点を、確認していきたいと思います。
ためしに2021年の業界株ETFの月別のリターンを表にしてみましたが、パッとみて傾向をつかめる人はほとんどいないと思います。
一方で、一般的には以下のように好景気と不景気の波で、伸びる業界株が変化していくことが知られています。
これはただの一般論で、現実にはあまり参考にならないデータなのでしょうか。
私はそうは思いません。ちゃんと業界株にもデータの見方を工夫してあげれば、はっきりとした好調と不調の傾向が目に見えると思っています。
業界株の好調と不調の確認の仕方
そもそもの目的に立ち返ってみると、なぜ業界株に投資をするのでしょうか。
私の場合はS&P500のリターンを上回りたいからですが、ほとんどの人も同じ目的だと思います。(そうでなければ、S&P500に投資すればいいだけです。)
なので、「業界株がS&P500よりもどれだけ多くリターンをだしているか」という視点で業界株のリターンを整理し直してみたいと思います。
2012年から2020年3月までの期間で、「ヘルスケア業界ETF(銘柄:VHT)」と「生活必需品業界ETF(銘柄:VDC)」が毎月S&P500(銘柄:VOO)よりもどれだけ多くリターンを出したか集計してみました。
その結果がこちらです。
残念ながら、これではゴチャゴチャしすぎて傾向がまるで見えてきません。
「傾向」が見たいなら、上のグラフのデータを直近12か月の平均値に変えてみることにしましょう。すると、下のグラフのようにかなりスッキリと傾向が見えるようになります。
これだけでも何となく浮き沈みが見えますが、アメリカの景気の強さ(GDP成長率の前年比)を重ねてみると、次のようになります。
上のGDP成長率のグラフ(黄色線)を見てみるとわかるように、リーマンショック後の2010年代のアメリカの景気拡大期にはラクダのコブのように景気のピークが2015年と2018年の2回きています。
2010年代の半ばはアメリカの景気拡大の勢いが弱まる中で、2015年はチャイナ・ショック、翌年はブレグジット・ショックなどがあり、2016年にもアメリカは景気後退に陥る可能性があると一部では言われていました。
2016年の大統領選挙でトランプ氏が大統領になると、大規模減税のおかけで2018年にもう一度景気のピークがやってきた経緯があります。
そして、上のグラフに視線を戻すと、この2回の景気のピークを超えたあとに、2回ともヘルスケア株と生活必需品株のリターンがよくなっている様子わかります。
ここまで整理すれば、ヘルスケア株と生活必需品株はたしかに景気のピークを超えた後に強いことがわかります。
さいごに
この記事では、データの見方を工夫して業界株のリターンの傾向を見ていきました。
一見すると業界株のリターンは傾向がつかみにくいですが、景気の浮き沈みで確かに動きがあるようです。
最後にせっかくなので、2020年の新型コロナウイルス流行後の業化株の動きを見てみたいと思います。
これを見るとGDPは前年比+12%で持続不可能なほど高くなっていて、恐らく2021年4-6月でピークをつけるはずです。そうなると、ヘルスケア株や生活必需品株のリターンが上向くはずなのですが、いち早く動くヘルスケア株は既にリターン改善の動きが始まっているように見えます。