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米国株投資家が恩恵を受けてきたドル高・株高の時代は終盤へ

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この10年以内に投資を始めた人は、ほとんどドル高と米国株の恩恵を受けてきた時代だったと思います。

私も投資を始めたのは2007年なのでリーマン・ショック前後の強烈なドル安は経験したものの、それさえ過ぎてしまった2009年以降は、アメリカが世界に先駆けて金融危機から復活した影響で、ドル高と米国株高ばかり見てきました。

このドル高も米国株高も、日本人の米国株投資家にとっては資産を大きくするための強い追い風になりました。

これが近年の米国株人気を高めた正体だと思います。「S&P500やナスダック100のインデックスに投資していれば、いいんでしょ」という空気は、わずか10年のドル高と米国株高の時期に生まれたものです。

今日この記事で書くのは、多くの人にとってまだ早すぎる心配になるかも知れませんが、数年先を見据えて投資する長期投資家なら考えておきたい「ドル安」や「米国株で期待できるリターンの減少について」の懸念について振れます。

この懸念が的中した場合には、次の10年間は米国株だけでなく、新興国株も保有資産に入れておいたほうが良いかも知れません。

この記事のポイント

  • 2010年代はドル高と米国株高が同時に起こった時代だった。2020年も概ね2010年代の流れに乗って順調な株高が続いている。
  • しかし、世の中はドル・マネーが溢れてドル安になりやすい環境にある上、米国株もだいぶ割高になり、ドルと米国株高の流れの転換点は年々近づいている。
  • 歴史を振り返ると、2010年代は1990年代に似ていた。1990年代から続いたドル高・米国株高は2000年にITバブルが弾けて終わり、2000年代は逆にドル安・米国株安になった。米国株が低迷した2000年代に輝いたのは新興国株だった。
  • この歴史が繰り返すなら、2020年代は米国株だけでなく新興国株への投資も視野に入れたほうが良さそう。

ドル安や米国株の期待リターン減少が、多くの投資家にとってまだいらない心配だと言ったのは、まだ1-2年くらいは米国株は上昇を続けると思っているからです。

2020年9月でバブルのような価格上昇が見られるのはテスラやズームなどの一部の銘柄だけで、米国株全体としてはまだバブルの域には達していません。

歴史が繰り返すなら、米国株上昇の終わりの始まりは中央銀行FRBによる金利引き上げ(金融緩和終了)ですが、まだほど遠い状況です。

今の投資環境のおさらい


まず2020年9月現在の投資環境をさらっとおさらいしておきます。

米国株は2010年代から続く、大きな株高の流れの中にあります。新型コロナウイルスの流行で2020年3月に大きく株価が減少しましたが、9月時点ではすでに株価は回復して最高値を更新しています。

2010年代からFRBの金融緩和を背景に上昇を続けた米国株

この背景にあるのは、リーマン・ショック後から続くFRBの金融緩和策です。このおかげで、アメリカは2008年の金融危機から世界でいち早く景気回復を遂げ、世界中の投資家の資金をアメリカに呼び込んでドル高・株高の時代を作りました。

米ドル高が続いたことを示す2010年代のドル・インデックス

順調な米国株に吹く向かい風


しかし、リーマンショック後の株の底値の2009年から続いていたこの流れも、かなり終盤に来ているように見えます。

ドルの上昇はすでに上のグラフを見ても息切れしているように見えます。また、2020年3月の新型コロナウイルス以降、アメリカ政府は積極的に経済対策を打ち出したことで景気の底は脱しましたが、その代償として財政赤字が膨らんでドル安になりやすい環境になりました。

次に、米国株についてはまだまだ最高値を更新していて元気そうですが、今後12ヶ月に予想される企業の利益の22.8倍も高い株価がついています(S&P500のForward PERは22.8)。過去10年間の平均値は15倍程度なので、今はやや割高です。

米国株のPERは過去10年でもっとも割高に

10年単位の長い期間で見た場合に、2010年から続いたドル高と株高の時代が終わりに近づいている姿が見えてきます。

1990年代との共通点


もしも2010年代から続く今のドル高・米国株高が転換点を迎えるとしたら、次はどんな時代が来るのでしょうか。

そこで参考になりそうなのが、1990年代と今のアメリカ経済の類似点です。実は、1990年代も今も同様にドル高と米国株高を迎えてて、この2つの時代は比較的良く似ています。

ドルと米国株の動きだけでなく、金融政策も似ています。1998年にアメリカの景気がまだ良かったのにFRBアラン・グリーンスパン議長は3回利下げをして景気をさらに拡大させましたが、まだ景気が良かった2019年でも今のFRBパウエル議長は同様に3回利下げをするなど、共通点が多いです。

1990年代と2010年代の共通点

  • 1990年代:ドル高・株高の時代。背景に当時のアラン・グリーンスパン議長の緩和的な金融政策があり。最終的に利上げに転じて、2000年のITバブル崩壊につながる。
  • 2010年代:ドル高・株高の時代。背景にリーマンショック後の景気回復と、緩和的な金融政策があり。2020年現在はバブルではないが株は割高。

1990年代はドル高・株高の時代が続きましたが、最終的にFRBが過熱した景気を冷やすために利上げをした結果、2000年にITバブルはじけて、ドル安・株安の時代に終わりました。

1990年代も2010年代もドル高の時代だった
1990年代も2010年代も米国株高の時代だった

2010年代から続く金融緩和と景気回復を背景にした今のドル高・株高の流れが、1990年代のようにFRBの金利引き上げ(金融緩和の終了)でドル安・株安に転じるのかが注目です。

2020年代は新興国株がリターンを上げるか


もしも歴史が繰り返されて、これからの10年間が2000年代のようなドル安・米国株安になってしまったとしたら、投資家はどのような手を打てばいいでしょうか。

ドル安・米国株安の2000年代でリターンをあげている資産を探すと興味深いのは、新興国株の動きです。新興国株は一般的にドル安になるとドルの債務負担が軽くなって株価が上がりやすくなる傾向があり、2000年代はドル安を背景に新興国株のリターンが伸びました。

1990年代から2010年代まで10年ごとにドル高・ドル安・ドル高を繰り返したことをグラフで見てきましたが、米国株と新興国の10年ごとのリターンを比較すると面白いように10年ごとに主役が交代しています。

ドル高の1990年代後半は米国株が強かった
ドル安の2000年代は新興国株が強かった
ドル高の2010年代は再び米国株が有利に

2020年9月時点のFRBはまだまだ金融緩和を長く続ける姿勢を見せているので、すぐにドル安や米国株安になる心配はいりません。しかし、長期投資家なら2020年代に大きな転換点を迎えた場合に、新興国株に目を光らせておくと資産を守れるかも知れません。


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