米国経済は最終的には新型コロナウイルスの経済的ダメージから復活すると私は信じています。
だからこそ、今まで「景気が本格回復したら株価の最高値を超えることを見越して、短期的に株価が下落したら買い増しをする」という方針を書いてきました。
米国株が再び最高値を超えると考える理由
多くのヘッジファンドも株を買うのに慎重になっているようです。私も経済と株価の動きにあまりも大きな隔たりがあるので、短期的には米国株が大きく下げる可能性はあると思っています。それでも、景気が回復すれば米国株が最高値を更新すると考える理由をこの記事で書いていきます。
ただし、長期的には米国株に強気ですが、これから右肩上がりに株価が上昇していく姿はどうにも想像しにくいです。数年後に最高値を試すまで回復するにしても、そこに至るまで何度か下落を繰り返す気がしています。
この記事では、おそらくもっとも悲観的な予想を立てている投資家の一人だろうと思われるスコット・マイナード氏が6月16日CNNで語った見解を紹介したいと思います。要点を一言でいうと、7月から株価は下げてS&P500は半値になる可能性もあると言っています。
この記事のポイント
- スコット・マイナード氏は7月にも株価が下がり、S&P500は現時点の価格の約半分の1600ポイントにまで下落する恐れがあると発言。
- マイナード氏の独自の試算では、S&P500の企業の利益は100ドルほどに低迷すると予想。過去のS&P500の価格は、企業利益の15倍だったことから、理論的には約1500ポイントくらいが妥当な価格と考えている。
- また、株価が大きく下落した場合には、アメリカも日銀のように中央銀行が株を直接購入することが検討されうると予想しているようです。
私はマイナード氏の意見に完全に同意しているわけではありません。もともと個人的にはS&P500は下落は20%くらいで、大きく下げても3月末の底値を下回るか否かくらいだと考えていました。
ただし、自分より明らかに先見の明がある投資家の話は、前提の置き方(例:S&P500の企業利益は100ドル)や結論(適正価格は1600ポイント)は異なっても、考え方は参考になるかと思って記事にしました。
今の企業の業績から考えると、やはり米国株は短期的には割高に見えます。
7月にも株価は1600まで下がると主張するマイナード氏
CNNでスコットマイナード氏が語ったポイントをまとめておきます。
マイナード氏の主張
- アメリカ中央銀行による前代未聞の行動(社債購入など)で大量のドルが供給されて、今の市場は浮上した。
- しかし、ファンダメンタルズ(経済業態や企業業績)を見ると何ら変わっていない。
- ファンダメンタルズを重視する人間としては、今後は企業業績にあわせて株が下落しうると考えている。
- (独自の予想では)S&P500の企業利益は100ドルだが、現在の株価は3000ドルで企業利益の30倍もの価格がついている。
- 通常であれば15倍程度でS&P500は1500ドルほどの価格がつくはずなのに、今はITバブルで見られたような割高な状態。
- 来月7月かそこらで、S&P500は1600まで下落するだろうと予想している。
企業利益を使ったS&P500の株価予想の仕方
上のマイナード氏の話の中で、はじめて企業利益とS&P500の価格予想の話を聞く人には少し難しい箇所があるので補足をします。
S&P500の価格を予想するには、(1)S&P500の企業の利益がいくらになりそうかを知り、(2)一定の倍率(PER:通常は15倍)で掛け算することで、おおよその価格を計算することができます。
(1)S&P500の予想企業利益の調べ方
(1)の500社分の企業利益を算出するのは個人では難しいですが、Factsetがまとめた資料から、専門家(アナリスト)の予想を見ることができます。
6月19日時点の資料で以下の図を見ると、アナリストはS&P500の一株あたりの企業利益を約140ドルと見積もっているようです。(マイナード氏の独自予想では、ここを100ドルと見積もっていました。)
(2)一定倍率PERの決め方
企業利益に倍率(PER)を掛け算すれば、S&P500の予想価格を出すことが出来ます。ちなみに、この倍率(PER)の過去10年の平均は15.2倍、過去5年間の平均値は16.9倍でした。
マイナード氏は10年間の平均値で15倍を採用し、(1)の企業利益の100ドルを掛け算することで、S&P500の予想価格を約1500ドルと見積もっていました。
ただ、金利が低い時代はこの倍率が高くでも正当化されるので、15倍で見積もったマイナード氏の予想はかなり悲観的です。
私なら、今は歴史的に低金利な時代なので、適正な倍率は過去5年間の平均値16.9よりも高くします。以下のグラフを見る限り、2020年2月に新型コロナウイルスで株価が崩れる前の倍率は19倍まであがっていたので、19倍を採用します。
(1)で企業利益をアナリストの予想を信じて140ドル、(2)で19倍を仮定すると、140×19=2660ドルがS&P500の予想価格として算出できます。
いずれにしろ短期的に割高な米国株
S&P500の予想価格の求め方を見てみると、スコット・マイナード氏の予想はかなり悲観的なシナリオだと言えそうです。
しかし、それよりも楽観的な私の予想ですらS&P500の予想価格は2660ドルで、6月22日現在のS&P500(3097ドル)よりも15%低い水準になっています。
つまり、どうも最近は株価が上がり過ぎているように思えます。
来月7月は4-6月期の企業決算が続々と発表される月です。企業利益を元にS&P500の株価を見直す動きが出るなら、マイナード氏が言うように7月から下落が始まる可能性があります。
ただし、6月15日に株価が急落した時にFRBが追加金融緩和策を発表して株の下落を止めたように、7月に株価が下落してもFRBが追加政策を発表すれば、意外にも株価はすぐに回復に向かうかも知れません。
6月の下落時にはFRBが個別企業の社債を買い取る発表をしましたが、7月以降に再び株の急落があった場合には、今後は日銀のようにFRBが株の購入に動き出す可能性もあると、マイナード氏は見ているようです。