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景気後退に入ったかどうかの見分け方【サーム・ルール】

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早ければ年内、遅くとも1年以内にアメリカ経済は大きく悪化する局面に入ると思っています。

この局面はインフレが続いてスタグフレーションと呼ばれるのか、インフレも落ち着いて景気後退と呼ばれるのかわからないので、この記事では2つまとめて景気後退と呼ぶことにします。

>>【関連記事】景気後退かスタグフレーションか

この記事では景気後退期に入っているかどうかの見分け方の方法の1つを紹介します。

この記事のポイント

  • 失業率の上昇から、景気後退期に入ったかどうかを判断する方法に、サームルールと呼ばれるものがある。
  • サームルールでは直近3ヶ月の失業率の平均値が過去12ヶ月の失業率の最低値よりも0.5%上昇していたら、景気後退期と判断する。

景気後退期と株価の下落について


2000年代のITバブル崩壊時のように景気後退期の前後でも大きく株価を下げる場合もありますが、たいていの場合では株価の下落の大部分は景気後退期に起こります。

なので、景気後退期に入ったタイミングで投資の守りを固めるだけでも、資産の下落をいくらか防ぐことができます。

これだけ聞くと「株って簡単だなあ」と思われるかもしれませんが、今すでに景気後退に入っているかどうかを知るのはそれほど簡単なことではありません。

アメリカが正式に景気後退に陥ったかどうかは全米経済研究所(NBER)が数年後になって振り返ったときに初めて宣言されるのですが、こんなにも発表が遅いなら投資の判断には使えません。

一応、GDPが2四半期連続で実質マイナス成長が続くと「テクニカルな景気後退」と呼ぶことはありますが、これとアメリカの正式な景気後退は少し異なります。

サーム・ルールを使った景気後退期の判別

ではいち早く景気後退したかどうかを判断したい場合、他に何を頼ればいいでしょうか。

そんなときに元FRBエコノミストのクローディア・サームさんが考えたサーム・ルールという方法はなかなか有用かもしれません。

サーム・ルールでは景気後退期に入るときに失業率が上昇することに注目しています。

サーム・ルールによる景気後退期の判定

  • 過去3ヶ月間の失業率の平均値が、過去12ヶ月間の失業率の最低値よりも0.5%上昇していたら、景気後退期と判断する。

とてもシンプルなのですが、この方法はかなり正確に景気後退を言い当てることができます。

ためしに1990年以降の4回の景気後退を調べてみましたが、サーム・ルール通りに過去12ヶ月の最低失業率からだいたい0.5%上昇した頃には、景気後退になっています。

失業率は翌月1週目の金曜日に毎月発表されるので、これなら比較的早く景気後退期に入ったかどうかを判断することができそうです。

失業率4.1%まで上昇すると危険信号


最後にこの記事を書いている2022年6月末時点の失業率を確認していきます。

次の図はアメリカの失業率のグラフですが、今は3.6%で12ヶ月で最も低い失業率になっています。なので、サーム・ルールによれば今は景気後退ではなさそうです。

そして、最近ニュースではIT企業を中心にレイオフやリストラの話が出ていることを考えると、恐らく今の3.6%の失業率が最低値になるはずです。

そしてサーム・ルールを使えば、この最低値3.6%に0.5%を加えた失業率4.1%を安定して超えるようになってしまうと、アメリカもいよいよ景気後退に突入するのだろうと推測できます。


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