2023年の米国株は上昇して終わりそうです。
その上昇の原動力となったのは何だったのかを少し考えてみたいと思います。
この記事のポイント
- 2023年に米国株は上昇したが、その背景にはリバースレポの減少が関わっていそう。
- 量的引き締めでFRBの資産は減っていたが、それ以上にリバースレポの金額が減少した結果、世の中のドルの量が減らずに米国株は上昇した。
- しかし、リバースレポは2024年5月にはゼロになる恐れがある。この時期以降の量的引き締めは株価に悪影響が出るリスクあり。
去年のFRB資産とS&P500
1年ほど前の2022年12月に、2022年の米国株はFRBの金融政策の影響を強く受けた値動きになっているという話をしました。
当時作ったのが下のグラフです。
FRBの資産額(ただし、リバースレポと米政府口座残高の2つを除いたもの)と、米国株指数のS&P500の動きを重ねてみると、かなり似ていることがわかります。
このことから、米国株はFRBの資産額にかなり影響を受けているのではないかと考えることができます。
2023年のFRB資産とS&P500
そして、2023年もこの動きは続いていたようです。以下がこの記事を書いている時点で最新版のFRB資産とS&P500のグラフですが、2つの動きはやはり似ています。
正確には2023年半ばにFRB資産額とS&P500の値動きが別々に離れて動く時期があったり、前年ほどの強い関係が見られなかったのですが、緩やかに2つの動きは似ていたことになります。
2023年の米国株の上昇要因
ここまで話をして、「2023年の米国株は上昇していたけど、FRBの資産額ってQT(量的引き締め)で減ってなかったっけ」と気づく人も多いと思います。
たしかにその通りで、この1年間は米国株は上昇した一方で、FRBはせっせと国債の保有額を減らしていくQTという政策をして資産額は減っています。しかし、「FRB資産(リバースレポと政府口座を除く)」と説明した数字は、S&P500同様に今年も上昇しています。
それを理解するには、今までぼんやりと誤魔化していた「FRB資産(リバースレポと政府口座を除く)」と書いていたものが何なのかを説明しないといけません。
実はこれは(1)FRB資産額から(2)リバースレポの金額と(3)政府口座残高を引き算する形で算出しています。
- (1)FRB資産 – (2)リバースレポ – (3)政府口座残高
リバースレポとか政府口座残高とかというのは、ちゃんと説明すると以下のようになりますが、あまり深く考えなくていいです。要するにどちらも世の中に出回っているドルの現金を回収する役目がある思ってください。
- (1)リバースレポ:お金が余っている人(MMFなど)がFRBに1日などの短期間でお金を貸して利子を得る。この金額が増えると、市場のドルをその分だけ回収していることを意味する。
- (2)政府口座残高:アメリカ政府のお金が入っているFRBの口座。政府が国債を発行すると額が増え、その分市場からドルを吸い上げることになる。
意味から考えると、世の中にあふれるドルの量が多くなればなるほど、上の式の計算結果は大きくなります。FRBが金融緩和をすれば(1)が大きくなり、世の中からドルを回収する(2)や(3)の力が弱まればドルも増えて、式の計算結果は大きくなります。
2023年は(1)のFRB資産はたしかにQTで減ったのですが、それ以上に引き算をする(2)リバースレポの金額が大きく減ったので、「(1)FRB資産 – (2)リバースレポ – (3)政府口座残高」の値は2023年を通じて上昇しています。
難しいことを言いましたが、今年はリバースレポ金額というものが減少したおかげで米国株は上昇したと言えそうです。
さいごに
さいごに2024年のことについても、ちらっと考えていきます。
2023年の米国株の上昇要因はリバースレポ金額の減少にあったと話をしましたが、この金額もいつかは底をつく時がきます。具体的には2024年5月には底を付く予定です。
このリバースレポ金額がゼロになったタイミングで、FRBは資産の縮小をやめたりそのペースを落としたりしないと2024年の米国株に悪影響が出るリスクがあります。