個人消費はアメリカのGDPの7割弱を占める重要なものですが、その結果を占うために先に発表される小売売上を見ていきたいと思います。
3月のアメリカの小売売上ですが、前月に続いて3月のデータはそれほど良くありませんでした。ただ、1月に好調な売上を記録したおかげで2022年1-3月期はまずまずの結果を残せたようです。
不安な点はたくさんありますが、四半期で見ればアメリカの景気後退はまだまだ遠いように見えます。
この記事のポイント
- 3月は一見すると小売の売上が伸びたように見えるが、インフレで売れているように見えているだけだった。
- 2月と3月でアメリカの小売は実質マイナスの成長が続いているが、四半期ではまだ成長は続いている。景気後退はまだ先になりそう。
インフレで伸びているように見えるアメリカの小売
昨晩、3月のアメリカの小売データが発表されました。
- 予想:前月比+0.6%
- 結果:前月比+0.5%
- 前回:前月比+0.3%から0.8%へ上昇修正
一見、この結果見ると、かなり良い数字に見えます。特に前回の結果は大きく上方修正されたようです。
このデータを見るときの注意点は、売上金額にはインフレによる値上げを含んでいる点です。
既に発表された消費者物価の影響を除いてみると、3月分の小売売上も大幅に上方修正された2月の小売売上もマイナス成長だったことがわかります。
- 3月小売(インフレ除く):前月比マイナス0.7%
- 2月小売(インフレ除く):前月比マイナス0.01%
それでも1-3月の小売は好調
ただし、2月と3月のインフレの影響を除いた小売の売上が実質マイナス成長だったとしても、まだ景気後退を警戒するのは早そうです。
1月がやたらと好調だったために、22年第一四半期(1-3月期)の小売はインフレの影響を除いても前年比+4.5%と高い伸びを記録しました。
小売データからわかること
3月のアメリカの小売データを見てきましたが、ここまででわかることをまとめておきます。
- 2-3月は物価の伸びが高く、一見すると小売売上が伸びているように見えてもその増加分はすべてインフレによるもの。(実質マイナス成長)
- 心配な材料は多いが、アメリカは1-3月期で前年比+4.5%(前期比年率では+7.7%)で成長しているので、まだ景気後退は来ない。
まず1点目ですが、今のアメリカはインフレが景気を押し下げていると言えます。
2021年から何度か「小売売上が伸びても、その増分の大半がインフレによるものだった(実質成長がゼロだった)」という記事を書いてますが、これはまだ解決に向かってません。
そもそもの問題は、平均賃金が物価の伸びに追いついていないことです。これでは、手取りが増えてもが経済成長ができません。
これは2010年代にはほとんど見られないことでした。
そしてこの数ヶ月では賃金の伸びは頭打ちになっているのに、物価の伸びが加速しています。
この傾向に歯止めをかけようにも、アメリカの経済成長を止めているインフレを抑え込むために金利を引き上げれば、その金利が今度は景気を冷やすことになります。今はまだアメリカ経済は持ちこたえていますが、景気後退はほぼ避けられない展開になったと思います。
ただ、2点目に関して、私はまだアメリカの景気後退は差し迫ってはいないと思っています。
景気後退の目安は2四半期連続でGDP成長率がマイナスになることですが、1-3月で小売の伸びが前年比+4.5%もあるのに、GDP成長率が急に2期連続でマイナスになるとはまだ思いません。
景気後退はどんなに早くても今年の秋から冬にかけて影がちらつき始めるのでは、と思っています。