最近の記事で書いているように、まだ米国株は底を打っていないと考えていて、どこかでまだ株価の下落があると思っています。
そして、昨晩発表されたアメリカの7月の小売売上高を見ているとアメリカ経済にとっては良い点も見られたのですが、株価にとっては少し心配な面も見えてきました。
この記事のポイント
- 7月の小売売上高は名目でも実質でも、前月比でほぼゼロ成長だった。
- インフレを除いた実質では前月までマイナス成長だったので、ゼロ成長に回復したのはアメリカ経済にとって良い点だった。
- しかし、大幅にプラス成長が続いて株価を支えていた名目の小売売上の伸びがゼロ成長にまで低下したのは、株価にとって警戒すべき点。
横ばいだった7月の小売売上高
アメリカのGDPを大部分を占めている個人消費が悪化していないかを見ることは、重要だと思っています。
しかし、このデータは他の経済指標よりも少し発表のタイミングが遅いです。
なので、先に発表される小売売上を見ながら、個人消費が堅調だったかどうかを想像することになります。
7月の小売売上を見ていると数字はパッとしませんが、それほど7月の消費はそれほど悪くなかったと思います。
7月小売売上高(名目)
- 予想:前月比+0.1%
- 結果:前月比+0.0%
- 前回修正値:前月比+1.0%から+0.8%へ下方修正
結果は前月比+0%の横ばいでしたが、内容を見てみるとガソリン価格の購入額が下がり、オンラインショッピングなどのその他の消費が伸びて埋め合わせています。
前月までは消費者はガソリン価格の高騰に苦しんで他の消費を減らしてきましたが、7月はその流れに変化があった模様です。
消費者が光熱費にかける金額が減り、消費の余力が回復しているようにも見えました。
実質小売売上はマイナス成長からゼロ成長に改善
また7月は物価の伸びもかなり緩やかだったこともあって、物価の伸びを差引いた実質の小売売上高はゼロ成長に回復できたようです。
前月までは物価の伸びを差し引くと(実質だと)、小売売上の伸びはマイナス成長だったので、ゼロ成長に戻っただけでもアメリカ経済にとっては良い兆候です。
アメリカの消費は低成長に向かっているのか
ただ、気になる点がないわけではありません。
物価の伸びを含む(名目の)毎月の小売売上の伸びは、どうも低成長に向かっているようにも見えます。
名目の消費の伸びが止まっている点は、企業の業績にとってはよくありません。
企業の売上は物価の値上げを含む名目消費に連動するので、上のグラフのように名目小売売上の成長率が鈍化しているということは、企業の売上の伸びが鈍化していることを意味します。
2022年前半は名目消費の高い伸びのおかげでアメリカ企業の業績は持ちこたえていましたが、今度は企業の売上成長の鈍化が心配になります。
今回の小売売上高は実質でマイナス成長からプラス成長に戻った点でアメリカ経済成長は上向いていると言えるかも知れませんが、一方で、小売が名目でプラス成長からゼロ成長に鈍化してしまっていることから、企業の業績と株価へ懸念が増したと思います。