今週発表されたものなかに、意外な結果だったものがあるので、触れておきたいと思います。
アメリカの8月の小売売上高についてです。この数字が意外なほど強かったので少し驚きました。
この記事では、8月に小売売上が伸びた理由を見ながら、今のアメリカの消費に何が起こっているのかを考えていきたいと思います。
この記事のポイント
- 8月の小売売上高は前月比で大きなマイナス成長が予想されていたが、結果は予想外のプラス成長だった。
- どうも新学期が始まる前に政府が子供のいる家庭に給付金を配ったことで、予想以上に消費が下支えられた模様。政府の支援があれば消費は増える。
- 人々にお金さえあれば、コロナ感染拡大中でもモノはネット通販などで買われている。一方で、サービスはコロナの感染拡大には弱く伸び悩んだ。
予想外の強さを見せた8月のアメリカの小売売上高
私は7月の小売売上高の記事を書いたときに、新型コロナウイルスの再流行の影響を受けて、アメリカでの消費が伸び悩んでいると書きました。
「この流れを受けて、アメリカで新型コロナウイルスの感染拡大が続いた8月は消費が低調なんだろうな」と考えていたのですが、予想に反して8月の小売売上高は調子が良かったようです。
上のグラフを見ていると、「月ごとに結果は上下にバラけているし、今月はたまたま上振れしただけでは?」とも思えるのですが、これがどれだけ意外なことだったかは、この数字が発表される前に飛び交っていたエコノミスト(経済の専門家)の予想を見てみるとわかります。
エコノミストの事前予想はマイナス0.7%とかなり悲観的でしたが、結果は真逆のプラス0.7%と大きな開きがありました。
8月の小売売上高(前月比)
- 予想:マイナス0.7%
- 結果:プラス0.7%
小売売上高の好調の要因は政府の給付金か
さて、どうしてこれだけ予想が外れてしまったかについて、ブルームバーグが丁寧に記事にしていました。
>>米小売売上高は予想外に増加、底堅い需要示唆-自動車以外が好調(ブルームバーグ)
私は不勉強で事前に知らなかったのですが、どうも記事によると新学期前に政府は子供がいる家庭に給付金を出して、消費を支えていたようです。
小売売上高の予想外の増加は、新学期に備えた購入や子どものいる家庭への給付金などが下支えした形で、財への需要の強さを示唆した。無店舗小売りや総合小売店、家具、食料品店の売り上げが伸びた。
前月7月よりも8月のほうが新型コロナウイルスの感染は拡大していたのですが、それでも売上が伸びたところを見ると、政府からの給付金さえあれば消費をするという動きが見られそうです。
ただし、どんな消費も伸びたわけではなく、感染拡大中でも自宅からポチッとネット通販で買い物ができるモノの消費は調子が良い一方で、旅行や娯楽などのサービスの支出は感染拡大中は伸びていないようです。
新型コロナウイルスのデルタ変異株の影響で、旅行や娯楽などのサービス需要が抑制されている。小売売上高の統計では唯一のサービス関連支出のカテゴリーである飲食店は前月比横ばいとなった。
まとめ
この記事では、8月に小売の売上高が予想外にプラス成長したことについて書いていきました。
新学期で支出が伸びやすいタイミングで、子供のいる家庭に限るものの政府の給付金があったことが、今回の消費拡大の要因のようです。
今回の給付金は2020年から3度実施された給付金に比べると規模はかなり小さいですが、それでも政府はこの経験を通じて、給付金があればモノの消費は活発化することを学んだはずです。
最近は新型コロナウイルスとの戦いが思った以上に長引くとの見方が出てきました。
ワクチンの接種率が高い国でも新型コロナウイルスの感染再拡大が見られているので、おそらくアメリカでも今後あと何回か感染拡大が起こる可能性が高いと思われます。
その時、感染拡大とともに沈んでいく消費を底上げする手段として、やや小規模でもアメリカ政府は給付金を配ろうという考えになったもおかしくないなと個人的には感じました。
そうなったときに、ネット通販の割合が大きい企業やアマゾンのような企業は思わぬ恩恵を受ける可能性があるかもしれません。