アメリカの経済はゆっくりではありますが、着実にリセッション(景気後退)に向かっていると思います。
その兆候は、先週発表された3月の小売売上高にも表れているようです。
この記事のポイント
- 3月の小売売上高は予想を下回って、前月比で大きなマイナスを記録した。
- 2022年から個人消費が弱まっているトレンドは続いている。
- 3月に発表されたインフレ、雇用、消費などアメリカの経済指標は低調なものが多かった。
低調だった3月のアメリカ小売売上
アメリカのGDPは7割くらいが個人消費で占められています。シンプルにいうと個人消費が好調なら、アメリカ経済は調子が良いということになります。
ただ、毎月の個人消費は発表が遅いので、まずは先に発表される小売売上高を確認することになります。
その3月の小売売上ですが、今月もまた悪い数字が出てきました。
- 予想:前月比-0.5%
- 結果:前月比-1.0%(前回:-0.2%)
もともとさえない数字が予想されていたのですが、予想を大きく超えるマイナスになっています。
前年比(下図)の推移も見てみると、アメリカの小売売上高は右肩下がりの傾向が見られます。特に前年比の数字はこの数ヶ月に大きな低下が見られます。
やはり景気拡大ペースの減速が起こっていることが確認できます。
インフレの影響を覗いた実質売上高はさらに低調
それでもまだ上のグラフでは、前年比で小売の売上高は+2.9%は伸びていると見ることもできます。
ただ、この増加分はすべてインフレによるもので経済成長はしていないようです。
次のグラフはインフレの影響を除いたアメリカの売上高(実質売上高)の伸びを示したものですが、既にインフレを除くと前年比で約2%のマイナス成長になっています。
実質の小売売上高の成長が止まったのは2022年からですが、今月は2022年よりもやや大きめなマイナス成長になっています。
これらを考えると、アメリカの景気はやはりそれほど強くないのではないかと考えてしまいます。
さえなかった3月のアメリカ経済指標
このアメリカの小売売上高で、3月の経済指標の発表はだいたい一段落しました。
今月になって発表された経済指標にはいくつも弱い数字が出ていたように思います。
- 求人はまだかなり多いが、減少傾向が見られる(2月JOLTS)
- 失業者が増加に転じている兆候が見られる(3月雇用統計など)
- 消費者物価の伸びも順調に低下している(3月消費者物価)
- 1月に強かった消費が2月と3月で不調が続き、2022年からの(3月小売売上高)
インフレの低下という良い側面も見られますが、同時にアメリカが景気悪化に向かっているのではないかという悪い側面の懸念もあります。
この変化をもたらしている一つの要因には、FRBの金融引き締めがあると思います。インフレの低下もまだ不十分なので、これからもまだしばらくは金融引き締めは続く可能性はあります。
ただでさえ金融政策の効果はかなり遅れて実体経済に影響がでるので、まだこれからしばらく金融引き締めが続くとなれば高い確率でアメリカの景気は冷やされすぎることになるだろうと私は思っています。