1月のアメリカの小売売上高の発表がありました。
結果は予想を大きく超えてかなり良かったです。最近はアメリカの景気を強気に見る姿勢の人が増えていますが、またそれを後押しするようなデータが出てきた模様です。
しかし、今回のデータは少しだけ冷ややかに見ても良いと思います。前月が悪すぎたので、今月がよく見える効果はかなりあります。
アメリカの景気に強気になるのは、来月以降もこの強さが続くかどうかを見届けてからで遅くないはずです。私はまだアメリカの景気にはかなり悲観的です。
この記事のポイント
- 1月の小売売上高は前月比で+3.0%と大きな成長を見せた。
- しかし、背景には前月の低迷が大きかったことがあげられる。3ヶ月平均の伸びを見ると、大きな成長とはいかない。
- アメリカの景気に対して強気に転じる人が増えているが、まだ判断はできない。
小売売上高
アメリカの小売売上高ですが、1月は予想よりも大幅に良い数字が出ました。
- 予想:前月比+1.7%
- 結果:前月比+3.0%
以下では、2022年からの小売売上高の伸び(前月比)をグラフにしてみましたが、今回の伸びがどれだけ大きかったかがひと目でわかります。
しかし、これには少々カラクリがあります。前月のデータが(12月の悪天候などが影響したのか)一時的に悪かったので、今月の伸びが前月に比べて大きく見えています。
こうしたデータのバラツキを抑えるために、前月比の伸びを3ヶ月平均にしてみると(下図)少しもう少しだけ冷静に見れるかもしれません。
1月の小売売上高はたしかに好調でしたが、上のグラフを見ると2022年に続いていた成長鈍化のトレンドを打ち破るかどうかはまだわかりません。
アメリカの景気が強くなっているかは、強い結果を来月以降も残せるかを確認してからで良いだろうと思っています。
増える景気強気派
ただ、今回のデータはアメリカの景気強気派にとって追い風になるようなデータだったと感じます。
最近ではゴールドマン・サックスが景気後退確率を引き下げたり、飛行機が軟着陸するようにアメリカ景気は痛んでも大きなダメージは回避できるという意味でソフトランディングするだろうという論調が増えています。
>>米景気後退の確率、25%に引き下げ 雇用統計受け=ゴールドマン(ロイター)
さらには、軟着陸どころかそのまま飛行(景気拡大)を続けるノーランディングもあり得るという話をする人も出てきています。
>>ウォール街、「ノーランディング」も想定-米国株は先行き不透明
ただ、私にはどうにも景気後退を回避できるようには見えていません。政策金利は過去何十年も見なかったペースで上昇して(下図)、住宅価格の低下は既に始まり、企業の利益は悪化しています。
そして、アメリカの人員削減数も増加に転じ始めているのに(下図)、このまま景気拡大を続けるとはどうにも思えないのです。
雇用がまだ強いので安定した職があることを背景に、個人はまだ余力がクレジットカードを使って消費を続けているように見えるので、まだしばらく景気の拡大は続くはずですが、景気後退の回避は難しいのではないかと思っています。