8月のアメリカの小売売上高は予想を上回る伸びになりました。
しかし、これはある程度予想できていたことかもしれません。この月のインフレは予想以上に伸びていたからです。
インフレを除く実質で見ると8月の小売売上はマイナス成長であり、実際には消費は弱かったことが示されました。
この記事のポイント
- 8月の小売売上高はインフレによって予想以上に伸びた。
- しかし、インフレを除く実質で見ると売上高は前月からマイナス成長で消費は弱かったことがわかる。
- また、9月からは一部の人々が学生ローンの支払いを再開しており、9月や10月からどれだけ消費が弱まるかが今後の注目。
インフレで伸びたアメリカの小売売上
アメリカの8月の小売売上は予想以上に良い数字になりました。
- 予想:前月比+0.2%(年率2.4%)
- 結果:前月比+0.6%(年率6.9%)
前月比で+6.9%はかなり高い成長率に見えます。
しかし、これでアメリカの消費は強いというのは違う気がします。売上を押し上げたのはインフレだからです。
実際に、インフレを除いた数字(実質で)見ると8月のアメリカの小売売上の成長はマイナスに陥っていることがわかります。
つまり、小売売上高を押し上げたのはインフレで、実際は個人消費はそれほど強くなかったようです。
これを受けて、アトランタ連銀が出している23年第3四半期のGDP予想値(GDPNow)は下方修正されることになりました。
下方修正した後でも前期比年率4.9%ならアメリカの経済は絶好調といえますが、ともかく8月は当初予想していたインフレを打ち勝つような消費の成長はできなかったようです。
消費の鈍化は9月か10月か
ここまで、8月の消費について書いてきました。
ただ、正直言うと8月の小売売上高への注目度は低かったと思います。投資家が注目しているのは、今後数ヶ月で消費がどの程度落ちるかだからです。
前からお伝えしてたように10月には学生ローンの支払いが再開されます。そうなると今まで消費に回せていた資金の一部は、ローンの支払いに当てなければなりません。
それにより10月以降にどれだけ消費に悪影響が出るのかが注目されます。
いえ、早ければ9月にも小売売上高や個人消費にその影響が出始めるかもしれません。
実は、返済の延期が不要な人は9月からローンの支払いを開始できる制度があるのですが、それを利用している人は一定数いるようです。
ゴールドマン・サックスによると、9月1週目に学生ローンを支払う金額は2020年のパンデミック前の週を超える見通しだと言います。
これがどれだけ消費の成長を奪うのかは、9月と10月のデータで見ていきたいと思います。