毎月末に発表されるアメリカの個人消費に先がけて、4月の小売売上が発表されました。
結果は悪くなかったと思います。企業や消費者が感じる景気の強さ(景況指数)はとても悪いのに、雇用や消費のデータはまだ堅調という傾向が最近見られるという話を昨日の記事でしましたが、またもその展開となっています。
景況感が悪くてもまだ消費が堅調でインフレも収まっていないのなら、FRBとしては金融引き締めの手を休める段階にはなさそうです。
先週までの米国株の売りは今週に入って落ち着いている印象はありますが、しばらくしたらまた金融引き締めから米国株が売られる展開がやってくるのだろうと思いました。
この記事のポイント
- アメリカの小売売上は4月こそ予想を下回ったものの前月データに大きな上方修正が入った。
- 景気拡大は減速しながらもまだしっかりと続いていることが分かった。
- 消費に弱さはなかったので、利上げはまだまだペースを落とすことはないと考えられる。米国株の下落はまだ続きそう。
前月データに大幅な上方修正が入ったアメリカの小売売上
アメリカのGDPは7割が個人消費から来ています。個人消費はそれほど経済にとって重要なものなのですが、アメリカの消費はまだまだ持ちこたえているように見えます。
個人消費と関連が深いアメリカの小売売上の4月分のデータが上がってきましたが、この結果は良かったと思います。
- 予想:前月比+1.1%
- 結果:前月比+0.9%
- 前回改定値:前月比+0.5%から+1.4%へ上方修正
「予想を下回っているのに、どうしてこの結果が良かったと言えるのか」と思われるかも知れませんが、注目は前月データの大幅な上方修正です。
(私の中では)今までの景気の見方を少し変える必要がある規模の修正になっています。
前月データは実質マイナス成長から実質プラス成長へ
1ヶ月前に3月の小売売上が発表されたときに、「小売売上は前月比+0.5%で伸びているけれど、インフレの伸びを下回っている。つまり、インフレで売上が増えたように見えるだけで実質マイナス成長だ」という記事を書きました。
>>インフレで伸びているように見えるアメリカの小売(2022年4月15日記事)
しかし、今回の前月値の改定で、小売売上は実質マイナス成長から大きなプラス成長に修正されています。
3月小売売上高の実質成長率(インフレ調整後)
- 修正前:前月比マイナス0.7%
- 修正後:前月比プラス0.5%
データが上方修正される前はアメリカは物価高で消費の力が弱っていると見ることもできたのですが、一転して「アメリカは強い物価上昇に見舞われているが、それでもまだ成長を続けている」という見方ができるようになりました。
私は2021年末から消費が(インフレ調整済みで)実質マイナス成長におちいることを心配していたんのですが、3ヶ月連続の大幅な前月データの上方修正の結果、2022年は1月から4月まですべての月で実質プラス成長に変わっています。
利上げペースはまだまだ緩まない
アメリカは高い物価上昇にも関わらず消費がまだ落ち込んでいないとなれば、中央銀行のFRBは物価を抑えるための金融引き締めの手を緩める必要はなさそうです。
2022年が始まってから米国株と米国債はFRBの金融政策を背景に下落が続いていますが、まだまだFRBの金融引き締めも株価下落も続きそうだという色が濃くなった気がします。
先週から米国債の売りが落ち着き、米国株も今週から下落が一段落したかのような気配がちらついていますが、今後さらなる下落に注意が必要だと思っています。