世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者のレイ・ダリオは、混沌としている世界をクリアに見渡せる目をもつ人です。2007年の金融危機を予知して危機から資産を回避したりと、実績が十分にある人です。
そのレイ・ダリオがIMF・世界銀行の年次イベントのパネルディスカッションで、現在の景気のサイクルは1930年代にも似た状況になりつつあり、経済の停滞期を迎えつつあると言います。
1930年代との共通点
1930年代と言えば、世界的に景気の悪化が次々と進行して金利がゼロまで引き下がり、貧富の差が拡大して自国を救う救世主を求めてナショナリズムが台頭し、自国の経済を救うために高い関税をかけあうブロック経済圏が起こった年です。
確かになんか、今の世の中の風潮にとても似ていますね。
パネルディスカッションの中で、レイ・ダリオは今の時代と1930年代で似ている特徴として次の3点を上げています。
- 政策金利の引き下げの効果が薄れている
- 貧富の格差が拡大している
- 新勢力が台頭して、既存勢力と戦いを挑んでいる
政策金利の引き下げの効果が薄れている
レイ・ダリオによれば、景気が減速していくサイクルの中で、ヨーロッパと日本はすでに政策金利を引き下げでも景気の減速を止める効果が弱まっていて、アメリカも似た状況に向かいつつあると言います。
歴史的に見えても今のアメリカは1930年代と同じ程度の低金利です。また、当時もゼロ近傍まで金利を引き下げても、景気の悪化を止められなかった点で似ています。
貧富の格差が拡大している
1930年との類似点は、貧富の格差拡大でも似ていると言います。
今のアメリカは上位1%が下位90%の人々と同じ富を持つ富の集中が進んでいて、貧富の格差が社会のストレスを生んでいる状況は1930年代とよく似ているとレイ・ダリオは指摘しています。
新勢力が台頭して、既存勢力と戦いを挑んでいる
さらに1930年代は、ドイツと日本とイタリアでナショナリズムという新勢力が台頭して戦争を起こしましたが、今はアメリカと世界で急速に勢力を拡大している中国と「貿易戦争」、「技術開発戦争」、「通貨戦争」、「政治の戦争」4種類の戦いをしていると見ているようです。
これからの経済は破裂せずに停滞に向かう
ただし、レイ・ダリオは今の世の中の債務状況を見る限り、1930年代ほど景気は大きく破裂するのではなく、大きく停滞すると見ているようです。
債務の返済状況を見ると、債務危機が起こる可能性は低い。しかし、債務は十分積み上がっていて、ほとんど限界に達した負債が残っている。だから、これは大きく破裂するのではなく、大きく停滞していくのだろう。(レイ・ダリオ)
1930年代の経済の破裂はそれはそれは大きなものでした。10年ごとにアメリカの経済を区切った時、1930年の経済成長率はITバブルとリーマンショックがあった2000年代と方を並べる低水準の1.8%でした。
年代 | 実質成長率 | 株価実質リターン |
---|---|---|
1920 | 3.90% | 18% |
1930 | 1.80% | 0% |
1940 | 5.10% | 4% |
1950 | 4.10% | 16% |
1960 | 4.20% | 5% |
1970 | 3.30% | -2% |
1980 | 3.20% | 11% |
1990 | 3.30% | 14% |
2000 | 1.80% | -2% |
2010 | 2.30% | 11% |
その1930年代の大きなバブルよりマイルドなものになるという予測は、一般的には朗報です。
今の状況はサブプライムやリーマンショックほど差し迫った危機感が世の中になく、稲妻のような株価下落が来るイメージがわかないので、「大きな破裂」よりも「大きな停滞」が来るという説は、感覚的にも納得はできます。
ただ、私はまだレイ・ダリオほど「大きな停滞」が来るという予測に自信がありません。そして、次の株価下落で株の買い増しを計画しているので、できれば「大きな破裂」が一度来て、それから株価が回復するわかりやすい展開を望んでいます。
大きな停滞が、もしも長きに渡ってズルズルと株価がゆっくり低迷する場合には、いつ株を買ったらよいかの判断が難しくなるため「最高値から○○%下落したら、購入する」や「最高値から○〇%下落したら、株の保有比率を〇○%に引き上げる」などルールを作っておく必要がありそうです。