アメリカでは6月からは満期を迎えた国債と住宅ローン担保証券が、最高でそれぞれ300億ドル分と175億ドル分が再投資されずに市場から引き上げられる(量的引き締めが始まる)ことになっているのですが、まだほとんど話題になっていません。
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今のアメリカはこの規模の量的引き締めなら、十分に耐えられるということなのでしょうか。
FRBの資産データはあまり見慣れていないので、見方があっているかやや自信がないのですが、調べた限りではまだまだ量的引き締めは本格化していないように見えます。
この記事のポイント
- 今回の量的引き締めでは満期を迎えた国債のうち毎月30億ドル分までは再投資せずに、市場から資金を引き上げられることになっている。
- しかし、FRBが保有する国債で既に満期を迎えた国債はまだ少なかったためか、FRBの国債保有額は大きく減っていなく、悪影響もほとんど見られない。
2022年6月から始まった量的引き締め
まず、今FRBが実施している量的引き締めについておさらいをしていきます。
FOMCのサイトで公表されている文章を見ていると、どうも次のような内容を実施をするようです。
- 以前は満期などで償還が発生した国債と住宅ローン担保証券は再投資して、市場に資金を提供していた。
- 22年6月からは償還された国債のうち毎月300億ドルまでは、再投資をしないで市場から資金を引き上げる。(9月からは600億ドルに増額)
- 同じく償還された毎月175億ドルまでの不動産ローン担保証券も、再投資しないで市場から資金を引き上げる。(9月からは350億ドルに増額)
一見すると、6月から国債300億ドルと住宅ローン担保証券が175億ドルのあわせて475億ドルのFRB資産が減少していくようにも見えます。
実際にFRBの資産が減っているのかをこれから確認していきます。
まだほとんど減っていないFRBの資産
6月23日にFRBが公開したデータを見てみたのですが、FRBの資産額はほとんど減少していないように見ます。
量的引き締めをやっていないわけはないので、FRBが保有している国債だけの資産額をグラフにしてみると、たしかに6月は国債の保有額は減っていますが、やはり減少幅は小さいです。
国債は毎月最大300億ドルほど減らせるはずなのに、6月23日までの時点でまだ60億ドルほどしか減っていません。2018年には最大で420億ドルも減らしたことがあったことを踏まえても、6月はまだ規模が小さいです。
6月から量的引き締めが始まっているのにアメリカ経済に悪い影響が出ていないという話をしましたが、そもそもまだ量的引き締めは本格的には始まっていないことが分かりました。
量的引き締めが本格化していない理由
では、なぜ6月も下旬になるのに、量的引き締めはまだ本格的には始まっていないのでしょうか。
その理由の一つは、2022年6月に満期になる国債は多くなかったからかも知れません。ニューーヨーク連銀のサイトで過去1年間のFRBが買った国債のデータを見ても、今月が期限のものは多くありませんでした。
またFRBの買い取った国債には、「各月の15日に満期日を迎えるもの」と「月末に満期日を迎えるもの」の2つがあるようですが、15日満期のものはそれほど多くありません。
上のグラフで見た2022年6月分の量的引き締めは6月23日までのデータしか反映されていないので、6月末に国債の償還された後で再度データを確認するのが良いかも知れません。
さいごに
この記事では、6月1日から始まっているはずのFRBの量的引き締めについて調べてみました。
「量的引き締めが始まっているはずなのに、金利や株価には影響が見えてこないな」と感じる背景には、どうもまだ資産の縮小が本格的に進んでいない背景があるようです。
私は量的引き締めの金額は増える22年9月を警戒しているのですが、ひょっとするとこの影響も9月30日以降に現れるのかも知れません。