最近のこのブログの記事では「2023年にアメリカで景気後退が起こる確率は高いが、今すぐではない」という記事を書いています。
そうなると「まだ米国株に投資して良いってこと?」という疑問が湧くのが自然だと思います。
タイミングを読むのが上手な人は、その人の判断で株の投資を続ければいいと思います。しかし、景気後退のタイミングを機敏に感じ取る自信のない投資家はすでに株の保有率を下げて良い時期だと思います。
この記事のポイント
- 1960年以降の過去9回の景気後退前のS&P500を見ていると、(中央値で)景気後退の8ヶ月前には株価が低下を始めている。
- 現時点から8ヶ月後の2023年9月までに景気後退が起こっていると考えるなら、そろそろ株の下落リスクに対応するために保有を敬遠しても良い時期。
- ニューヨーク連銀によると、2023年9月の景気後退確率は26%とかなり高め。
景気後退よりも前に下がるS&P500
一般的に、株価は景気後退が起こる前に下落を始める傾向があります。
次の表は過去9回の景気後退で、S&P500が景気後退の何ヶ月前にピークをつけて下落に転じたかを調べたものです。
これを見ると、だいたい(中央値で)8ヶ月前には下落に転じていることがわかります。
(A)S&P500のピーク | (B)景気後退入り | (B)-(A)の期間 |
---|---|---|
1959年7月 | 1960年4月 | 9ヶ月 |
1968年11月 | 1969年12月 | 13ヶ月 |
1973年1月 | 1973年11月 | 10ヶ月 |
1980年2月 | 1980年1月 | -1ヶ月 |
1980年11月 | 1981年7月 | 8ヶ月 |
1990年7月 | 1990年7月 | 0ヶ月 |
2000年3月 | 2001年3月 | 12ヶ月 |
2007年10月 | 2007年12月 | 2ヶ月 |
2020年2月 | 2020年2月 | 0ヶ月 |
平均値 | 6ヶ月 | |
中央値 | 8ヶ月 |
景気後退前の株価の値動きのだいたいの傾向を見るために、景気後退時の株価を100として過去9回分の株価の中央値の値動きをグラフ化すると次のようになります。
これを信頼するなら、今から8ヶ月後以内(2023年9月まで)にアメリカが景気後退に入っていると思うなら株への投資は避けたほうが無難かも知れません。
もちろん、上の表で見たように景気後退直前まで株価が上がる2020年や1990年(ともに景気後退突入月で株価のピーク)のような例もあります。
しかし、これらは新型コロナショックや湾岸戦争のような突発的なイベントによる景気後退で、今回の2023年で予想されているような行き過ぎた利上げによる景気悪化の場合には当てはまらないと考えています。
株価下落が景気後退よりも先に起こる背景
景気後退8ヶ月前から株価が下がり始める背景には、恐らく次のような仕組みが働くからです。
- (1)企業の業績や見通しが悪化する(株がピークをつけて下落するきっかけ)。
- (2)企業がレイオフを実施して、雇用が悪化する。
- (3)失業率が上がって消費が減り、不況に向かう。(景気後退入り)
上の(1)から(3)までにタイムラグが8ヶ月ほどかかるのだろうと思います。
現時点では企業によっては(1)や(2)がすでに起こっているものと思われます。たとえは、大手ハイテク企業は次々にレイオフを発表してます。
今週から決算シーズンは本格化しますが、そこで業績見通しの悪化が続けば(1)から(2)の動きが加速させる企業が増えるかも知れません。
8ヶ月後の2023年9月の景気後退確率
さて、過去の景気後退を見ていると8ヶ月くらい前から株価の下落が始まるという話をしてきました。
今回の場合は2022年の金融引き締めが強すぎて、2022年につけた株価をピークのまま景気後退に突入するのかも知れませんが、あと8ヶ月以内に景気後退になるならさらなる下落圧力がこれから数ヶ月で生まれるのかも知れません。
これから8ヶ月後の2023年9月の景気後退確率をニューヨーク連銀のサイトで調べてみると26%で、過去の数字と比較するとかなり高めになっています。
まだ景気後退までは時間はあると思いますが、株価の下落はいつ再び起こっても良いようにリスクコントロールしておくのが良いと思っています。