P&Gの2020年4-6月期の決算発表がありました。結果はとても良かったです。
この企業も新型コロナウイルスの影響を受けていないわけではなく、リモートワークが広まって美容品やひげそりなどの需要が減っている製品も多く抱えていますが、一方で衛生意識の高まりから洗剤などの生活用品が急成長したおかげで、予想を超える良い内容になっています。
この記事のポイント
- P&Gの2020年4-6月期決算は、収益も一株利益も予想を超える良い内容だった。
- 好調の要因は洗剤などの生活用品が急成長したため。美容品やひげそりなどの売上低迷を補って、P&Gの成長を牽引した。
- 買収製品や為替の影響を除いた売上(オーガニックセールス)も+6%で成長した。近年のP&Gは拡大しすぎた製品を絞り込んで改革を行い、2019年頃から成長率が回復したが、その流れを2020年度も継続できている。
- 安定した業績はかなり魅力的だが、P&Gの株価は20年7月末時点でやや割高な水準にある。今株を買っても、おそらく長期で実質4%(インフレ率が1.5%なら名目5.5%程度)程度のリターンにとどまる。
2020年4-6月期
- 一株利益:1.16ドルで、予想を0.15ドル上回る。
- 収益:177億ドルで、予想を7.3億ドル上回る(前年比+3.5%)。
P&Gの決算では買収や為替の影響を除いた製品の売上(オーガニックセールス)をみて、どの程度成長できているかを判断することが多いのですが、オーガニックセールス成長率も前年比+6%と高い水準を維持できました。
私は2013年からP&Gの株を保有しているのですが、近年は特にP&Gは業績が好調な印象があります。
P&Gは2010年代後半からブランドの数を絞って改革を行って、2019年頃から成長率を回復させることに成功しましたが、新型コロナウイルスに直面しても成長は維持できているように見えます。
またオンライン販売を増やしていることも、収益の成長につながっているようです。オンラインの売上高は年間で40%増の70億ドルを超え、会社全体の10%を超える規模になったことを明かしました。
強かったホームケア用品
P&Gの好調の要因を探るために、ここからは部門別売上を見ていきます。
部門説明
- 美容:ヘアケア(シャンプーやスタイリング)とスキンケア(美容・化粧品)を扱う部門。パンテーンやSK-IIなど。
- グルーミング:シェービングを扱う部門。ジレットやブラウンなど。
- ヘルスケア:オーラルケアとパーソナルヘルスケア(ビタミン、サプリメント、のど飴)を扱う部門。オーラルB、のど飴ビックス。
- ホームケア:ファブリックケア(洗剤やファブリーズ)、ホームケア(食器洗い洗剤、掃除用具)を扱う部門。アリエール、ジョイ、ファブリーズなど。
- ベビー・女性・ファミリーケア用品:幼児や女性、介護用品を扱う部門。ブランドはパンパースなど。
単位:10億ドル | 収益 | 構成比 | 前年比 |
---|---|---|---|
美容 | $3.2B | 18% | +0% |
グルーミング | $1.5B | 9% | -5% |
ヘルスケア | $2.0B | 11% | -1% |
ホーム | $6.3B | 36% | +11% |
ベビー・女性・ファミリー用品 | $4.6B | 26% | +3% |
P&G全社 | $17.7B | 100% | +4% |
注目は売上比率の高い「ホームケア製品」です。洗剤などの家庭を衛生的に保つための商品が、ウイルスの流行してから飛ぶように売れているようで、この売上成長率は+11%と他のカテゴリーを大きく上回っています。
以下は部門別のオーガニックセールス成長率ですが、ウイルスが流行した20年3Q(1-3月)と4Q(4-6月)のホームケア製品の売上は急上昇しています。
美容やグルーミング(ひげそり)などの人の目を気にする製品の売上が低迷していますが、ホームケア製品の成長がこれらの低迷を補ったようです。
やや割高にも見えるP&G株
ここまでP&Gの決算の良い面にふれてきましたが、この結果を受けて「P&Gの株は買いかどうか」と聞かれてると、判断に迷います。
簡単に割高かどうかを測るには、今後の予想利益の何倍の株価がついているか(Forward PER)を調べる方法があります。P&GのForward PERを調べてみると、年々増加していて割高感が増している傾向が見られます。
ちなみに、このForward PERの逆数をとると、長期のインフレ調整後のリターン(実質リターン)を概算で出せると言われます。現在のP&GのForward PERは25なので、今P&Gの株に投資すると実質で約4%のリターンが得られるようです。
P&G | Forward PER | 実質期待リターン |
---|---|---|
2014年 | 20.7 | 4.8% |
2015年 | 21.3 | 4.7% |
2017年 | 21.9 | 4.6% |
2018年 | 22.0 | 4.5% |
2019年 | 20.9 | 4.8% |
2020年 | 25.8 | 3.9% |
2020年8月 | 25.2 | 4.0% |
歴史的には株の実質リターンは6%前後なので、今のP&G株のリターンは少し物足入りない印象があります。
新型コロナウイルスが流行する中でもP&Gは収益・利益を伸ばしていて、安定した良い企業だと思います。ただし、世の中の投資家もそれをわかっているようで、既にP&G株はやや割高になっています。
新型コロナウイルスの中で売上を伸ばせる企業はそう多くないので、P&Gに限らず業績を伸ばしている企業はある程度割高になるのは仕方のない事かもしれません。