2月の末にしれっと、アメリカの個人貯蓄が発表されました。
2020年から2021年のコロナ流行期に貯めたお金のおかげで、その後数年間アメリカの個人消費は高い伸びを見せてきましたが、その余力はどれほど残っているのかを見ていきたいと思います。
この記事のポイント
- この数年間のアメリカの強い個人消費は、パンデミック時に蓄えた余分な貯蓄(超過貯蓄)によるものだった。
- 超過貯蓄は2021年9月以降減り続けており、4月末か5月にも枯渇する恐れがある。
- 超過貯蓄が枯渇すれば、賃金の伸びで消費を支える他ないが、アメリカでは賃金の伸びは低下してるので2024年後半の強い消費は望みが薄い。
パンデミック時に蓄えた貯蓄
まず、この数年間のアメリカの貯蓄の状況を確認します。
コロナ前のアメリカでは、経済の規模が大きくなるとともにアメリカの個人貯蓄額も右肩上がりに上昇してきました(上図の点線)。
しかし、2020年以降は新型コロナウイルスが流行すると、政府の給付金のおかげで懐が温まった一方で、外出できないために消費をしたくても消費できない時期があって貯蓄額が一気に増加しました。
2021年以降はワクチンの接種が広まって経済が再開しだすと、それまで貯めていた資金で消費を初めて、コロナ前を大きく超える消費の伸びがアメリカ経済を支えました。
超過貯蓄の残りはあと数ヶ月
さて、問題はコロナ時にたくわえた貯蓄を使った消費が一体いつまで続くかです。
さきほどのアメリカの貯蓄の推移のグラフを見てみると、2021年9月以降は従来のトレンドを下回る貯蓄しかできていないことがわかります。
つまり、2021年9月以降はパンデミック時に余分に貯めた貯蓄で消費をする傾向が続いているのです。
2020年3月からトレンドを上回って貯めた貯蓄の累計(超過貯蓄)が、どれだけ残っているのかを計算してグラフ化したのが以下の図です。
4月末までなら超過貯蓄はまだ辛うじて残っていますが、5月には枯渇するという結果になっています。
ただ、最近数ヶ月のペースが続けば、4月末の枯渇もあり得る状況です。
いずれにしろ、過剰な貯蓄がアメリカの消費を支えた時期はあと数ヶ月で終わりを迎えることになりそうです。
もちろん、超過貯蓄がなくなったから消費が急減速するというわけでもないと思います。コロナ前のように、労働で得た賃金の中から消費は続きます。
ただ、先ほど見た名目の個人消費の伸び(前年比)の最近のデータでは、すでにコロナ前の水準を割り込んでいるので、すでに超過貯蓄を使った消費は風前の灯火なのかもしれません。
まもなく余分な貯蓄を使う果たす今、アメリカの消費の伸びが続くかは最後は賃金の伸びにかかっていますが、賃金の伸びもかなり鈍化してきた印象があります。
よって、超過貯蓄を使い果たした後のアメリカの個人消費の伸びは、低成長になるのではないかと思っています。