今回の記事では、久々にアメリカの経済を扱います。
先日発表のあった2020年7月の個人消費の様子をこれから見ていこうと思いますが、個人消費の回復は数ヶ月前に多くの人が予想していたよりも、わずかに回復が順調に来ているように見えます。
6月も7月もアメリカの個人消費はエコノミストの事前予想を超える回復を見せました。
リーマンショックで最も深刻だった時よりも大きな個人消費の落ち込みを今も経験している上に、アメリカ政府からの失業保険の上乗せが減額された影響で消費の回復が今後鈍化する恐れもあるので、まだ油断はできない状況には変わりありませんが、2020年4月以降の数ヶ月の回復は比較的順調だったようです。
この記事のポイント
- 2020年7月のアメリカの個人消費は前月よりも回復の勢いは鈍化したが、予想を超える成長を見せた。
- 2020年4月はコロナ前に比べて約20%ほど落ち込んでいたアメリカの個人消費は、7月には約5%の落ち込みまで回復してきた。
- アナリスト達の企業利益予想では、コロナ前の水準を超えるのは2021年第3四半期と見ていて景気回復は長期戦なので、まだ油断は禁物。
7月まで順調に回復したアメリカ個人消費
アメリカはGDPの70%を個人消費で占めています。なので、個人消費の回復がアメリカ経済にとって欠かせないものになっています。
先日2020年7月のアメリカ個人消費が発表されましたが、この結果は予想していたよりも良いものでした。
2020年7月のアメリカ個人消費
- 結果:予想は前月比1.6%増で、結果は1.9%増。
- 前月:前月比5.6%増から6.2%増に上方修正。
この結果、2020年4月には20%ほど落ち込んでいた個人消費はコロナ前のマイナス5%の水準にまで回復しています。

過去の景気後退を振り返るとリーマン・ショックの最悪期ですら個人消費の落ち込みは景気後退前のマイナス2.5%だったので、今のマイナス5%は相変わらず著しい落ち込みに違いないのですが、ひとまず最悪期は無事に抜け出せたようです。

まだ油断できない景気回復
世界的に新型コロナウイルスが流行した2020年の春に心配されていたのは、「この不景気が想定以上に長引くかどうか」という懸念でした。
景気回復の初動の数ヶ月は順調に来ているようですが、まだ結論を出すのはあまりにも早いです。市場の予想でも景気の回復は2021年下半期以降だと見ていて、景気回復は長期戦が予想されているからです。
Factsetが集計したアナリストの企業予想では、S&P500の企業利益は2021年第3四半期にようやくコロナ前の水準に回復すると見ているようです。

また、株式市場は既にナスダックもS&P500もコロナ前の水準を超えていますが、一見すると「これはどういうこと?」と思われるかも知れません。
株価は将来得られると予想されるフリーキャッシュフローの総額で決まるので、コロナショックで一時的に景気が低迷しても1年後に元通りに戻るなら、大きな株価のダメージにならないと市場が考えているのかも知れません。
逆に言えば、市場は今はアメリカの景気が元通りに回復することを想定しているのに、コロナで失業した多くの人が職につけない状態がずっと続くような事態になると、個人消費も企業利益も回復が遅れて前提が崩れます。
FRBのパウエル議長が懸念しているのがまさにこの状況で、失業率と個人消費の回復傾向はこれからもゆるくウオッチしておいて損はなさそうです。