まもなく11月になると、アメリカの金融政策を決める会議(FOMC)が行われます。
その会議に参加する人たちが毎月注目して見ているアメリカのインフレ率(PCEデフレータ)に関する数字が出ているので、ここで確認してみたいと思います。
この記事のポイント
- 9月のPCEコアデフレータは前月比で予想を上回る物価の伸びを記録した。
- しかし、前年比や3ヶ月比で見てみるとインフレは相変わらず鈍化傾向にあることがわかる。
- 原油価格も10月に下がったので、インフレ鈍化には追い風。
インフレはまだ鈍化傾向にある模様
先週はアメリカのPCEデフレータというインフレ率の9月分のデータが発表されました。
「PCEデフレータ」と横文字が並ぶとわかりにくいですが、この数字は消費者が買った商品の単価を調べたものです。この単価が前月や前年と比べたときに大きく伸びていれば、インフレというわけです。
9月は残念ながら予想していたよりもやや上回る結果になったようです。
- PCEデフレータ:前月比+0.4%(予想+0.4%)
- PCEコアデフレータ:前月比+0.3%(予想+0.1%)
(※コアはエネルギーと食品の品目を除いた購入商品の単価を示しています)
ただ、9月の1回分のデータが上振れただけで「アメリカでインフレ再燃しているかも」と考える必要はないと思います。
たしかに、上に書いたコアの前月比の数字を見ていると9月は予想よりも物価の伸びが大きかったですが、前月比のデータは一時的に乱高下しやすいデータでもあります(下図)。
こういう場合には前年比で傾向を見ると良いのですが、前年比でそれぞれの伸びを確認してみると鈍化傾向にあることがわかります。
「前年比では最近数ヶ月の傾向はつかめないだろう」という疑い深い人もいると思うので、手元で最近3ヶ月のPCEコアインフレの伸び(年率)を計算してみました(下図)。
これを見ると、直近三ヶ月の物価の伸びは年率2.5%とほぼ理想的なペースにまで落ちてきています。
インフレの再燃に注意することは必要ですが、9月のデータを見る限りではまだインフレの再燃を心配するほどの伸びではないことがわかります。
原油価格について
最後にインフレ関連で原油価格についても触れておきたいと思います。
1ヶ月前までは原油価格の上昇が何ヶ月も続いていたのでインフレの再燃の心配もチラチラとしていましたが、最近は原油価格はピークから13%も下がって落ち着いています。
これなら、今後のアメリカのインフレにはさらに鈍化に向かうはずです。むしろ、少し原油価格下落のペースが早すぎることを心配しています。
過去に何か景気が大きく低迷するような経済的なショックが起こる時期を調べると、その数ヶ月前から原油価格が大きく下落する動きが見られます。
例えば、新型コロナショック(2020年3月)やリーマンショック(2008年3月)の前の原油価格を見てみると、どちらもショックが来る2ヶ月前にピークをつけて30%の急な下落が見られます。
2023年9月末からの1ヶ月で原油価格は13%下げましたが、このペースが11月も続くようなら少し心配です。
アメリカ経済は堅調な雇用と消費に支えられているので、景気サイクルとしては2024年前半から半ばくらいまでリセッションは来ないと思われます。
しかし、何かショックが起こるとなれば事態は急に動きうるので話は別ですので、11月も原油価格が下がるようなら少し警戒してもいいかしれません。
さいごに
さて少し脱線しましたが、このブログでは9月のアメリカのインフレ率を見ていきました。
9月の単月では確かに予想を上回る物価の伸びを記録しましたが、それでもまだアメリカのインフレは鈍化傾向が続いていると思われます。
10月には原油価格の下落が見られたので、この影響をうけて10月以降のアメリカではインフレ圧力は和らぐはずです。
まだインフレ率はFRBが目標にかかげる2%に到達していないので相変わらず金融引き締めは続きそうですが、それでもインフレの鈍化傾向が続くことはFRBにとっても投資家にとっても悪いニュースではないはずです。
また、今はまだ可能性は低いですが原油価格がピークから30%下落することになれば、経済ショックのような需要の低迷を織り込んでいる可能性もあることは頭の片隅に置いておこうと思います。