FRBも注目しているアメリカのインフレ指標(PCEデフレータ)が発表になりました。
今回の結果を見てもアメリカのインフレは引き続き良い感じに落ち着いてきているように見えます。
多少原油高の影響も見られますが、大事なのはエネルギーや食料品を除いた品目で価格の伸びがかなり低くなっていることで、この傾向は続いています。
この記事のポイント
- 8月のPCEデフレータは予想を下回る伸びを見せた。
- 特にPCEコアデフレータは前月比の伸びが毎月のように低下しており、8月は年率1.8%を記録した。
- 一方で、FRBの引き締めはまだ長いこと続くと言われている。景気の引き締めすぎが頭をよぎる。
PCEデフレータは予想を下回る伸び
PCEデフレータは、アメリカの人々が購入した商品の単価を調べてどれだけ価格が伸びているかを見ています。
消費者物価は人々が買わなくても値段だけ釣り上がれば上昇しますが、PCEデフレータは実際に買ったモノの商品の値段があがったどうかを見るので、より正確に世の中の物価を把握することができます。
さて、8月のPCEデフレータは物価の伸びが予想よりもわずかに小幅だったことがわかり、インフレを抑えたい今のアメリカにとってはまずまずの結果になりました。
- 前月比:+0.4%(予想0.4%)
- 前年比:+3.5%(予想3.6%)
また、変動が大きなエネルギーや食品を除いたPCEコアデフレータでも鈍化が確認できます。
- コア前月比:+0.1%(予想0.2%)
- コア前年比:+3.9%(予想3.9%)
この数カ月間、アメリカのPCEデフレータは鈍化傾向にありましたが、今回の結果も概ねインフレは鈍化傾向と見て良いと思います。
インフレ基調も低下へ
しばらく前までは、原油価格がアメリカのインフレを押し上げるのではないかと心配していましたが、今のところ過度にその心配をしなくて良さそうです。
下図を見るとたしかにPCEデフレータ(青線)は前年比でやや上昇に転じていますが、比較的価格の動きが安定しているPCEコアデフレータ(赤線)のほうはしっかりとインフレの鈍化が続いています。
PCEコアのインフレ鈍化が続いているようすは、前月からの物価の伸びを見てもわかります。
2022年の夏場は最大で年率7%のペースで物価が上がっていたのに、それが今では1.8%まで低下しています。これは、2023年8月の物価上昇のペースが12ヶ月続けば、アメリカのPCEコアデフレータは前年比1.8%の伸びになることを意味します。
上記グラフを見る限り、月を経るごとに順調にPCEコアデフレータの上昇ペースは落ちているので、もうしばらくは時間とともにインフレ率が鈍化する時期が続くのではないかと思います。
さいごに
しばらく前から言っていましたが、アメリカのインフレはやはり良い進展を見せているようです。
上図は2023年7月までのPCEコアを使ってニューヨーク連銀が算出したインフレ基調ですが、来週にも2023年8月分のデータが加わえてこのグラフが更新される予定です。
次のレポートでは、目標のインフレ率2%により近づいた絵が見られるはずです。
個人的にはすでにそれほど強い金融引き締めはいらないのではないかと思っているのですが、インフレ再燃を恐れるFRBにとっては石橋を叩いてインフレがはっきりと低下した姿を見るまでは、金融引き締めをやめないようです。
このような引き締めのスタンスを取ったときに、反対にインフレや景気を冷やしすぎてしまわないかが気になるところです。
現時点ではまだまだアメリカの景気も雇用も強いと見られていますが、まもなく2023年の第4四半期か2024年にも金融引き締めの影響が見られるはずです。
そうなったときに、大半のエコノミストや投資家が予想するようにソフトランディングで済むのか、それともハードランディングになってしまうのか、あと数四半期で見えてくるはずです。