先日、パウエル議長は「家計や企業が傷んでも、インフレを抑えるために強力な金融政策を続ける」と発言がありました。
この発言は個人消費や企業利益がマイナス成長になっても、金融引き締めを続けることを意味します。
この記事では先日発表があった7月のアメリカの個人消費を見ていきますが、今のところはまだプラス成長を維持できているので、問題は大きくなっていない印象です。
金融引き締めが続く中で、これから個人消費がどこまで耐えられるかが景気低迷の大きさや株価下落の大きさを決めることになりそうです。
この記事のポイント
- 7月のアメリカの個人消費者はインフレを除いた実質で前月比年率+2.5%で、2ヶ月連続で成長が加速した。
- しかし、名目では2022年でもっとも低い前月比年率+1.7%にまで低下している。名目での成長率は鈍化傾向にある。
- 名目の個人消費は企業の売上にも関係している。今後も名目の個人消費の成長率が下がるなら、株価は下落圧力がかかる。
7月の個人消費
パウエル議長の講演の直前に発表された、アメリカの7月の個人消費を見ていきます。
インフレを除いた実質で見た場合と、インフレを除いた名目で見た場合で結果の印象が異なるので、まずは経済成長にとって重要な実質で見ていきたいと思います。
アメリカの7月の実質個人消費
- 結果:前月比+0.2%(年率+2.5%)
- 前回:前月比+0.0%(年率+0.4%)
実質で見た場合のアメリカの個人消費ですが、7月は良かったです。5月にはマイナス成長に陥っていたのですが、2ヶ月連続で改善の傾向が見られています。
一方で、インフレを含む名目の個人消費の成長率はやや心配な状況です。
アメリカの7月の実質個人消費
- 結果:前月比+0.1%(年率+1.7%)
- 前回:前月比+1.0%(年率+12.6%)
上の数字だけを見ているだけなら、「何が問題なんだろう」と思うかも知れません。
しかし、下のグラフで2022年に入ってからの名目の個人消費の伸び(前月比・年率)を見ていると、成長率が2022年前半に比べて低下している傾向が見られます。
名目での消費が減る意味
名目の個人消費が落ちているということは、人々が企業で買い物をしたり、サービスを受けたりする金額が減っていることを意味します。
これは企業の売上に直結します。
既に多くの人が知っているように2022年1月から6月はアメリカはGDPがマイナス成長で景気は低迷していましたが、それでも上のグラフで見たように1月から6月の名目の個人消費は大きな成長を遂げていたので、これまでの業績(特に売上)は好調だった企業も多かったです。
しかし、いよいよ名目消費の伸びが低い水準にとどまってしまうと、今後は企業の業績は下がり、株価を下げる方向に進む恐れがあります。
まとめ
この記事では7月の個人消費を見ていきましたが、名目の成長率が落ちてきているのが気になりました。
アメリカ政府の給付金があったり、コロナからの経済再開をきっかけに2021年から40年ぶりの名目成長率が続いていましたが、その成長率が下がってきています。
パウエル議長は家計や企業がいくらか犠牲になってもインフレを退治すると言っているので、これからも成長率は鈍化することはあっても、回復はしばらく見込ません。
企業の売上や利益が下がってくれば、株価が少し心配だなと感じました。