8月の雇用統計に感じた違和感
8月の雇用統計は、一番注目される民間雇用者増加数が予想を下回る結果となりました。しかし、メディアで解説するアナリストは全体的に雇用環境は良好との捉え方が多いです。
雇用統計を見たときには、私も「そんなにいい結果だったかな。全体良い結果であるけれど、想定よりも悪い結果だったんではないか」と思っていました。
前日に発表があったADP雇用統計では、もっといい結果が出ていたので、余計にそう思ったのです。
景気後退の気配を感じさせない底堅さを見せた、2019年8月米ADP雇用統計。
なぜ8月の雇用統計が全体的に良いと言えるのか
私の見方がアナリストに勝っているはずが無いのは十分承知しているので、今回の雇用統計の何が良かったのかを整理してみました。その上で、たしかにアナリスト達が言うように、全体的には悪くない理由が見えてきたので、その理由についてこの記事に書いておこうと思います。
悪くないと言える理由は、(1)GDPの70%を占める個人消費を支える賃金上昇を続けていて、今後も個人消費の拡大が見込めそうなため、さらに(2)雇用者数を減らす前に見られる労働時間の短縮も今月は改善したことから、大きな雇用者数減少はまだ訪れないとする見方が広まったためです。
つまり、雇用者数が予想を下回ったものの、一方で今後も堅調なアメリカと個人消費とそれを支える雇用環境が続きそうというシグナルが現れているので「全体的に良し」という見方が広がっているように思います。
良かった点
ほとんど、結論を書いてしまったので、後は淡々と話を進めます。
- 平均時給は前年同月比で3.2%(予想3%増)の伸び。13カ月連続で3%超えの賃金上昇率で、個人消費を下支えしている。
- 平均週間労働時間は34.4時間と、約2年ぶりの低水準となった前月から増加に転じる。
- 失業率は3.7%で前月から変わらず、半世紀ぶりの低水準
平均時給が予想を超えて上がっているのは、非常に良いニュースです。アメリカのGDPは70%が個人消費で支えているので、13ヶ月連続で3%超えの賃金上昇は拡大している消費を維持する原動力になります。
また、雇用が減る前には今の従業員の賃金をカットしたり、労働時間を短縮する動きが見られますが、そうした動きは今月は見られなかったことから、雇用環境は総じて悪くないと言えます。
悪かった点
ただし、良い点だけあげると「今月の雇用統計は素晴らしかった」で終わってしまうので、最後に8月の雇用統計の良くなかった点も上げておきます。
- 非農業部門の雇用者数の伸び13万人と、予想の15.8万人増を下回った。
- 2020年国勢調査の臨時職員2.5万人の政府雇用が雇用者数押し上げており、それを除くと9.6万人増で3ヶ月ぶりの低水準。
- 小売業が7カ月連続で落ち込み、雇用全体の足を引っ張った
- 前月の結果も速報値14.8万人増から13.1万人増に下方修正
悪かったのは雇用者数の増加が鈍っていることです。この傾向は特に、今年の1月から見られます。
歴史的低水準だから雇用者増加は大きくは増えないという理由ならば問題ないです。しかし、この減少が景気の減速を示しているとなると、既に13万人まで減っているので、今後はさらなる雇用者増加の減少が起こると少し厄介なことになりそうです。