新薬の承認の結果を待つノボ・ノルディスク
2019年9月に入ってから、毎日のように気にしている銘柄があります。デンマークの糖尿病専門の製薬会社ノボ・ノルディスクファーマです。母体となる研究所の設立は1923年と歴史ある会社です。
多くの日本人投資家は見向きもしていない会社だと思いますが、ノボ・ノルディスクファーマにとっては期待の新薬の承認の判断が、9月にも下される予定になっています。
経口セマグルチドという、体内のインスリンの分泌を助けて血糖値を下げるタイプの薬(GLP-1受容体作動薬)です。このタイプの薬は今までは注射でしかなかったのですが、「経口」とあるように口から飲んで体内に取り込む形に世界で初めて成功したのが、ノボ・ノルディスクです。
私はかれこれ、この薬が最終開発段階にあった2015年から注目して行きたのですが、ようやく、ようやく数年に及んだ試験が終わり、2019年には日欧米で販売承認申請を出しています。その結果が、2019年9月にも発表される予定です。
この新薬の承認されれば2020年上半期にも販売開始と言われており、長年潜り込んでいたこの企業のトンネルにいよいよ光が指すかも知れません。
近年売上成長が止まっていたノボ・ノルディスク
ノボ・ノルディスクはそんなにすごい会社なのかというと、近年の成績を見てもまったくパッとしません。それどころか、お世辞にも良い成績とは言えませんでした。
なので、多くの日本人投資家は、この会社の存在すら知らない人が多いと思います。
2016-2018年までの3年間の年率平均で言うと、以下の通りイマイチな状態でした。
- 売上成長率: +1.19%
- 営業利益成長率: -1.50%
- 当期純利益成長率: +3.48%
- 一株利益成長率: +5.62%
売上減少の原因は、アメリカ市場での薬価引き下げの圧力を受けた主力製品インスリン
アメリカ市場で薬価引き下げの圧力を受けて、主力製品のインスリンの売上が減少を続けたのが近年の不振の原因です。そこで、近年成長著しい注射型のGLP-1受容体作動薬の領域に進出して、売上減少を食い止めていました。
しかし、肝心のGLP-1市場も近年はイーライリリーにシェアを奪われていました。新薬の世界初の飲むGLP-1受容体作動薬は、患者の注射の負担を軽減できるため、GLP-1市場のシェアの奪還とアメリカ市場の売上向上の期待がかかっています。
ノボ・ノルディスクの魅力は高収益な体質
ちなみに、私がノボ・ノルディスクに投資した2013年には、過去3年間の主要な数字の年率平均の姿は全く違ったのです。
- 売上成長率: +11.20%
- 営業利益成長率: +17.23%
- 当期純利益成長率: +20.47%
- 一株利益成長率: +23.87%
じゃあ完全に大失敗の投資だったかと言えば、そこまででもありません。
2013年1月-2019年9月 | ノボ | SP500 |
---|---|---|
トータルリターン | +9.85% | +13.55% |
その秘訣は売上が減少した今でも、粗利が84.2%、営業利益率42.2%と恐ろしく高収益な体質を維持できていることです。
高い利益をあげて、毎年のように自社株買いで発行した株の数を減らし、売上以上の一株利益の高さを維持してきたため、そこまで市場平均に対して致命的に負けることはありませんでした。(それでも、5年で市場平均4%負けはかなり大きいですが。)
ノボ・ノルディスクの高収益な体質は、今でも魅力の一つです。
惜しむらくは世界の景気が悪いこと
主力製品のインスリンの販売低迷を受けて、変革を迫られて売上が伸び悩んでいるノボ・ノルディスクですが、高収益な体質は維持できています。
そして肝心な売上を2桁成長に引き上げるための一手を2020年に打つためには、画期的な発明の飲むGLP-1受容体作動薬の新薬の承認がどうしても必要です。
ただ惜しむらくは、2019年から2020年は世界の景気の見通しが悪いことです。世界の景気のさえ悪くなければ、新薬承認後が追加投資のタイミングだと思うのですが、今の減速している世界の経済の中で個別株を買い増すのはややリスクがあります。
無事に新薬の承認が取得でき、景気後退期にノボ・ノルディスクの株が下がったら、買い増しの候補になると思います。