OECDは今年5月時点に算出した世界の経済成長の予測値を、ほぼ全ての地域で下方修正しました。米中貿易戦争やEU離脱などの通商問題が背景にあると見られています。
修正後の2019年の世界経済の成長率は2.9%で、この予測通りの経済成長ならば、2008-2009年の金融危機以降、最低水準になると言います。
2019年成長率 | 修正後 | 修正前 |
---|---|---|
世界 | 2.9% | 3.2% |
米国 | 2.4% | 2.8% |
英国 | 1.0% | 1.2% |
中国 | 6.1% | 6.2% |
ドイツ | 1.0% | 1.2% |
なお、イギリスについては、EU離脱が今後スムーズに行った場合のみを想定して算出しているようです。
また、2020年の経済予測も、下方修正がされています。19年の世界経済の成長率は危機以来最低水準の2.9%ですが、20年もそれに準ずる3.0%とふるいません。
2020年成長率 | 修正後 | 修正前 |
---|---|---|
世界 | 3.0% | 3.4% |
米国 | 2.0% | 2.3% |
英国 | 0.9% | 1.0% |
中国 | 5.7% | 6.0% |
ドイツ | 1.0% | 1.4% |
2020年は、アメリカと中国は2019年から2020年にかけて共に0.4%ダウンするほか、イギリスも成長率が低下するなど、経済大国の成長率鈍化が目立つ年になりそうです。
2020年に中国が6%を割り込んで、5.7%に成長が鈍化するとしているのも注目です。近年、中国GDP成長は減速傾向にあるのですが、中でも貿易を除いた中国国内経済(消費+投資+政府支出)の鈍化が著しいです。
中国のGDP成長率 | 国内(消費+投資+政府支出) | 貿易(輸出-輸入) | GDP成長率(国内+貿易) |
---|---|---|---|
18年1Q | 8.1% | -1.3% | 6.8% |
18年2Q | 7.5% | -0.8% | 6.7% |
18年3Q | 7.1% | -0.6% | 6.5% |
18年4Q | 5.9% | 0.5% | 6.4% |
19年1Q | 4.9% | 1.5% | 6.4% |
19年2Q | 5.0% | 1.2% | 6.2% |
近年の中国は輸入を大幅に減少させることで一旦はGDPの減少を防いでいるようにも見えますが、中国国内経済が今のペースで減速すると5.7%の経済成長も困難になる恐れがあります。
アメリカ株への影響
OECDによれば、アメリカの経済成長は19年2.4%から20年2.0%に減速すると見られています。普通に考えれば、20年はアメリカ国内の支出の伸びが鈍化して、企業の利益成長も鈍化し、株価を押し下げる要因になります。
その株価押し下げ要因を、取り除いてくれるのは金利引下げのはずですが、9月のFOMCによる金利見通しではしばらく金利引下げは見込めません。
投資をしている人間としては、2020年は「警戒モード」を容易に解除できない状況になりそうです。