1月の企業の景気はひどいことになっているのかも知れません。
1月上旬に調査したニューヨーク連銀の製造業の景況指数が発表されましたが、予想を大幅に下回って低迷しています。
これだけ企業の景気が悪化しても企業が人手不足で背景に人員削減に踏み切れないならアメリカはまだ景気後退入りしません。そうなると金融引き締めもまだしばらく続くと思われます。
そうなれば結論はシンプルです。これから金融引き締めでまだ企業の景気は状況は悪くなるので、今はまだ株を買ってはいけないと考えています。
- ニューヨーク連銀が調査した1月の製造業の景況感は予想を大きく上回って、大きな景気悪化の水準に落ち込んだ。
- 2020年5月以来で、過去5番目の低水準を記録した。
- しかし、まだ景気後退ではなく金融引き締めは続く。企業の業績はまだ悪化しうるので、株はまだ買いではない。
急低下したアメリカ製造業の1月の景気
1月3日から10日にニューヨーク連銀は製造業に景気アンケートを行ったので、その結果をみていきたいと思います。
冒頭にも書いたように、結果はひどいものでした。予想のマイナス8.7を大幅に下回るマイナス32.9に落ち込んでいます。(※数字は前月より良くなればプラス、悪くなればマイナスで表示されます)
NY連銀製造業指数
- 予想:マイナス8.7
- 結果:マイナス32.9(前回:マイナス11.2)
マイナス32.9という数字は、調査以来で過去5番目に低い数字だったようです。過去4回はいずれも景気後退の最中か、景気後退直後に記録されたものなので、恐らく今回も景気後退は不可避な気がします。
今月のデータは内訳をみても、全部ダメでした。
下の表に具体的な数字を載せましたが、新規受注は減っているのに、出荷も減っているので在庫だけは微増。従業員数の伸びは大きく鈍化し、既存の従業員にはコストカットのために労働時間を削減している状況です。
これらは全部、企業の景気が悪いことを示しています。
12月 | 1月 | 変化 | |
---|---|---|---|
新規受注 | -3.6 | -31.1 | -27.5 |
出荷 | 5.3 | -22.4 | -27.7 |
在庫 | 3.7 | 4.5 | +0.8 |
支払い価格 | 50.5 | 33 | -17.5 |
従業員数 | 14 | 2.8 | -11.2 |
平均労働時間 | -4.5 | -10.4 | -5.9 |
これだけ企業の景気が悪いので、恐らくS&P500の一株利益もかなり悪化しているものと思われます。
次のグラフのように、NY連銀製造業指数とS&P500の一株利益はかなり連動して動きます。一株利益の悪化は株価に悪材料となりそうです。
それでもまだ景気後退ではない
1月の企業の景気が悪かったことをお伝えしましたが、問題なのはまだ悪化しそうなことです。
今のアメリカ企業は人手不足の中でやっと採用した人材を手放すをためらっていると聞く通り、業績が悪くてもなかなか思い切った人員削減に踏み切れていません。
すると次のような(1)から(3)の繰り返しで、企業の業績がますます悪化するスパイラルに陥ります。
- (1)業績を悪くなっても、人手不足を背景に人員削減を踏みとどまる。
- (2)人手不足がいつまでも解消されずに、賃金上昇の圧力が高い状態が続く。
- (3)賃金インフレを恐れるFRBは金融引き締めを続け、さらに企業の業績は悪くなる。
この流れは、企業が失業者を増加させて景気後退になるまで続きます。
今のところ失業者が増えている兆候はないので、まだまだ企業の業績悪化が続いて株価の悪材料が増える展開も続くものと思われます。
なので、まだ株は買いではなさそうです。