経済指標を見ていると、アメリカの景気は本当に良くないように見えます。
8月の製造業の景気データがニューヨーク連銀から発表されましたが、その数字は控えめに言ってボロボロでした。
データが示すような景気の悪化がもしも一時的なものではないなら、やはり株の下落はまだ終わっていないのだと思います。
この記事のポイント
- ニューヨーク連銀が発表した8月の製造業景気指数はマイナス31.1と前月よりも大幅に落ち込んだ。
- 新規受注、出荷、受注残などの重要な数字が8月にどれも大幅に低下して、景気の悪化を示している。
- 懸念材料はインフレから需要の悪化に移ったかも知れない。
大幅に悪化したニューヨーク連銀製造業指数
ニューヨーク連銀は8月2日から9日で製造業に景気アンケート調査を行ったようなのですが、今月のデータは著しい悪化を示しています。
結果の数字がプラスであれば景気拡大、マイナスであれば景気悪化を示すのですが、大幅なマイナスに沈んでいます。
- 予想:5.0
- 結果:-31.1(前回11.1)
少し前を振り返ると、前月のデータは11.1でマイナスからプラスに転じて一安心していたのですが、今月のマイナス31.1という数字は2020年コロナ不況や2008年世界金融危機で見られたような悪い数字になってしまいました。
このニューヨーク連銀製造業指数とISM製造業指数は、同じような動きを示すことで知られています。
今回のニューヨーク連銀の数字が悪かったことで、投資家からの注目度が高いISM製造業指数も9月1週目に発表される数字は良くない結果が出てくると思われます。
インフレは低下して、需要は大幅鈍化
今回のニューヨーク連銀の数字は内訳を見ても、内容が悪かったです。
傾向としては物価の上昇圧力は弱まった点は良かったものの、需要が急低下していて、インフレよりも景気後退が心配されるレベルになっています。
まず、製造業が原材料などで支払っている価格は低下しています。インフレで悩んでいるアメリカには良いニュースでした。
しかし、需要の強さを表す新規受注・出荷・受注残はいずれも大幅に低下しています。
こういうデータを見てると、今のアメリカの問題はインフレから景気低迷に移ったような気がしています。
アナリストたちは景気悪化を織り込んでいない
市場は賢いと言われることが多いのですが、今回のような景気の悪化は既に市場に織り込まれているのでしょうか。
市場の投資家たちが全体が何を考えているのかはわかりませんが、市場のサンプリング(一部)のような存在のアナリストたちが何を考えているかは調べればわかります。
アナリストの予想を見ていると、今後のS&P500の一株利益予想は思っていたほど良くないと下方修正しているものの、その程度はまだわずかです。
アナリストの予想を見ている限りは、米国株はまだ景気の悪化を十分に織り込んでいないように見えます。
もしくは「今回のような景気の悪化は一時的で、すぐに景気拡大期に復帰できる」とアナリストたちが予想していて、その予想どおりに今後数ヶ月で景気が元通りになるなら、最近の株価上昇は景気回復を見越した正しい動きとも言えます。しかし、まだ金融引き締めが予定されていてこれから景気は冷えると予想される段階なので、すぐに景気が回復するというのも考えづらいです。
だから、今は米国株は復調していてい楽観的な見方が増えていても、まだ油断する段階ではないと思っています。