7-9月のアメリカ経済は好調と見られています。
しかし、前から話しているように全体的にすべてが好調なわけではなく、好調の分野と不調の分野は混在しているようです。
好調なのは雇用と個人の消費。一方で不調なのは製造業です。8月の製造業の景況感がニューヨーク連銀から発表されましたが、8月も製造業は苦戦しています。
この記事のポイント
- アメリカはサービス業を中心に景気拡大が続いているが、製造業は8月も不振が続いている。
- 8月は新規受注が減り、雇用者数も労働時間も減らすなど良い兆候は見られていない。
- アメリカの消費は2023年末にやや減速する恐れがあるので、それまで製造業の景気は持ち直せるかは1つの見どころ。
アメリカ製造業は8月も低迷が続く
アメリカでは「まだまだ景気が強い」とか「景気後退は回避できる」とかいう声がありますが、そんな中でも調子が悪いものはあります。
特に、周期的に好調と不調の波を作り出す製造業の不調が続いているのは、それほど良くないサインに見えます。
ニューヨーク連銀からは早くも8月の製造業の景況指数が発表されたので、数字を確認してみましたが、予想よりも数字は大きく悪化しています。
- 予想:-0.9
- 結果:-19.0
この結果はプラスなら景気拡大、マイナスなら景気悪化を示します。
今回の数字は大きくマイナスに触れているので、製造業に関しては8月も調子が上がらなかったことを示します。
下図に示したように、製造業の景況指数は2023年になってからほとんどがマイナスです。そして、その復調の兆しはまだ見られていません。
製造業の懸念点について
今回の8月のニューヨーク連銀の景況指数を除いてみると、内容もそれほどよくありません。
まず、前回プラスだった新規受注の指数は再び大きくマイナスに転じています。
また、従業員数や週労働時間の悪化を見ると、恐らく業績はそれほど良くないのでしょう。
というわけで、8月も製造業はそれほど景気がよくなさそうです。
というよりも、製造業の景気はまだしばらく浮上しないのではないかと思っています。製造業はサービス業に比べてアメリカ国外の景気にも影響を受けやすいからです。
欧州は景気が弱いか足踏み状態が続いていてスッキリしません。また中国は利払いができないほど資金繰りに苦しむ企業が不動産会社や信託会社などで出てきていることからも不調の根が深いことが予想されます。
世界経済の先行きが良くないことは、経済の体温計と呼ばれて先行指数として見られている銅の価格が下がっていることからも見てもわかります。
>>銅の値動きは今後の世界の景気鈍化と米国債買いを示している。
このようにアメリカ以外の国が低迷してしまうことは、製造業には逆風になるのだろうと思います。
今のところアメリカはサービス業を中心に個人消費が伸びていることから景気拡大できてますが、その間に製造業の不調を脱却できるかは見どころの一つになると思います。
また、アメリカの個人消費は10-12月期にちょっとした転機が訪れるかもしれません。この時期までにコロナの時期に蓄積した余剰貯蓄がなくなるかかなり減ると言われていること、免除されていた学生ローンの支払い再開されて消費が減る動きが見られること、高い金利を背景に各種ローンの支払い延滞率が上昇すると言われているからです。
その時期までに製造業を持ち直せないと、いくら強いと言われているアメリカの景気でもいくらか失速が起こるのだろうと思います。