スニーカー・シューズで世界的に有名なナイキが、需要予測を行うAIスタートアップ企業Celectを買収したようです。
ナイキのCOOのEric Sprunk氏はCelectの買収について「この買収をしたことで、世界レベルのデータサイエンティストが作った分析基盤が手に入り、ナイキのデジタル技術の優位性が増した」と自信を覗かせています。
今回買収したCelectとは一体どんな会社なのでしょうか。また、それがなぜナイキにとって大事なのでしょうか。
買収企業のCelectとは
Celectは2013年にMITの元教授達が創業した、データサイエンスに特化した企業のようです。
Celectが構築したクラウド上のデータ分析基盤を使えば、販売データから洞察を得られるようになると言います。例えば、ナイキのような小売業者であれば、需要予測を用いて実店舗やウェブショップをまたがって在庫管理を最適化できるようになるそうです。
世界中の人々が求める商品の提供を目指すナイキ
一般的にこのような分析には大量なデータが必要だと言いますが、世界で300億ドル(3兆円超え)の売上規模をもつナイキは、Celectがもつ「消費者が欲しい物を予測する技術」を実践して磨き上げる場としては、この上ない環境と言えます。
このCelectを買収した背景には、究極的には世界中の個々の消費者が求める商品やサービスを提供するというナイキの目標があります。それをデータから得られる洞察を駆使すること、最適化を行うこと、顧客の行動を見極めることで実現しようとしています。
盛んに行われる非IT企業の買収の意図
少し話は変わるのですが、今年は本当にIT系ではない企業のITスタートアップの買収や出資が相次いでいます。
- マクドナルドによる、ディスプレイメニュー最適化技術をもつイスラエルIT企業Dynamic Yieldの買収
- スターバックスによる、モバイル向け予約注文決済システムのスタートアップBrightloomへの出資
今までなら非IT企業はITスタートアップに対して買収や出資ではなくシステム発注という関わり方をしていたはずですが、あえて大きな資金を使って買収や出資を行う意図はどこにあるのでしょうか。
今回のナイキがCelectを買収することのメリットとしては「IT化の動きを加速させること」「優れた技術を自社で囲い込むこと」の他に、「(将来的に)他の小売業者への分析技術の販売」を考えている可能性もあります。
例えば、スターバックスの出資の例では、スターバックスとBrightloomで構築したスタバのモバイル予約決済システムを、他のレストランチェーン店にも販売する計画を明かしており、自社で培ったIT技術やサービスを売ることで、IT投資をいち早く回収して、早く次世代の技術の導入に移れるメリットがあります。
ナイキもひょっとすると、買収した分析基盤の小売業への将来的な販売も見据えている可能性もあるのではと、つい考えてしまいます。