11月のアメリカの雇用統計が発表されました。
注目に値するのは失業率の低さだったと思います。前月の4.6%から4.2%まで大きく下がっていて、この数字はすでに景気が悪いときのものではないと思います。
なので、今月の金融政策を決める会議(FOMC)で金融緩和の縮小のペースが早まるのだろうと思いました。
市場もそれを見越したのか、昨晩は金融緩和縮小でハイテク株が売られるいつもの展開になっていました。
この記事のポイント
- 雇用者の伸びはいまいちだったが、失業率は大きく低下した。
- 失業率は2017年11月以来の4.2%。ITバブルからリーマンショックまでの景気サクルでは一度も見られなかったほど低い。
- 好調な雇用を受けて、毎月の債券購入ペースの縮小(テーパリング)の勢いも今後は加速する見通し。
11月の雇用統計
11月のアメリカの雇用統計の主な数字を確認しておきます。
- 雇用者数:+21万人(予想+55万人)
- 失業率:4.2%(予想、4.5%、前回4.6%)
- 平均時給(前年比):0.3%(予想0.4%、前回0.4%)
このブログを読んでいる人なら、上の数字はすでに他のニュースで見て知っていると思います。
これをどのように見るかは、人によって意見が分かれるところだと思うので、私はどう感じたかを書いていきたいと思います。
私の率直な感想は「失業率は少しビックリするほど低い。雇用者と平均時給は微妙」です。
もう丁寧にいうなら、「失業率を見ると、もはや金融緩和を続けるような弱い景気じゃないから、今月から金融緩和の縮小のペースが早まっても不思議ではないな」と同時に、「今月も平均時給は物価の伸びに負けそうで、このままいけば早ければ2023年にもアメリカのGDPは低成長になり景気後退という形でインフレも和らぐだろうな」ということを考えいました。
金融緩和不要と言える低い失業率
今月の失業率はかなり低かったので、少しデータと一緒に振り返ります。
どれだけ低い数字だったかを表現するのに一番良い方法を考えたのですが、ITバブル崩壊からリーマンショックまでの景気サイクルと比べると良いかも知れません。
以下に2000年以降のアメリカの失業率のグラフにしてみましたが、ITバブル崩壊からリーマンショックの間でどれだけ好景気の時期を見ても失業率が今回の4.2%まで下がったことはありませんでした。
2007年に失業率は最低で4.4%まで下がっていますが、参考までにこのときのアメリカの政策金利を調べてみると5.25%です。
当時とは経済環境もかなり違うので政策金利を5.25%に上げるべきとは思いませんが、2021年11月で失業率は4.2%まで下がったなら、今のゼロ金利の金融緩和を続ける理由はなさそうです。
金融緩和の目標はすでに達成
金融緩和の目的は「雇用の最大化」「物価の平均2%(前年比)で安定」を実現するためですが、今回ですでに雇用の最大化はほぼ解決したと思います。
インフレは2%どころか6%を超えているので、もはや緩和のやりすぎが問題になるレベルです。
FRBのパウエル議長は12月の会議(FOMC)で金融緩和の縮小ペースを上げるかどうか検討すると言っていますが、今回の雇用統計でかなりの高い確率で縮小ペースを上げると思われます。
金融緩和のおかげで株価が上がっていた米国株は、11月の雇用時計の数字を見て緩和縮小ペースが早まることを感じ取って、この日は株価を下げた模様です。
物価の上昇においつかない賃金上昇
ちなみに、もう一つだけ気になったのは賃金上昇率です。
通常ではあれば、今月の+0.3%(前月比)の賃金上昇はとても景気が強いと見ます。
しかし、2021年のアメリカは毎月のように前月比+0.5%以上でインフレが加速しているので、+0.3%程度の賃金上昇ではまるで物価の上昇に勝てていません。
この傾向が続けば(例えば半年から1年くらい続けば)、貯蓄が尽きて消費が続けられなくなるので、いずれ景気の過熱が抑えられて消費者物価(インフレ)の伸びも止まると思います。
しかし、それはアメリカの消費やGDPの伸びも鈍化することを意味します。
インフレは一度上がると持続しやすいのに消費は冷めやすいので、インフレが収まる前にアメリカの成長率が大きく減速して景気後退に入りそうな気がしています。
2022年はインフレとの戦いの年、それに打ち勝ったとしても次に来るのは2023年か2024年の景気後退かも知れないと思っています。