アメリカで毎月発表される経済データの中で、一番注目度が高いのは雇用統計です。
2022年2月の雇用統計の発表があったので、この記事で触れていきたいと思います。
この記事のポイント
- 2022年2月もアメリカは雇用は強かった。雇用者の伸びも失業率も予想以上だった。
- 一方で、平均時給の伸びはいまいちだった。やはり今月も賃金の伸びは物価の上昇に追いついていない。
- 賃金を上回る物価のせいで、アメリカの景気が損なわれている状況。雇用統計発表後に、市場の景気後退予想は一段と強まった。
雇用は伸びたが、賃金が伸び悩んだ2月
既にニュースなどで確認済みの人も多いと思いますが、2月の雇用統計の結果を確認していきたいと思います。
- (1)非農業部門雇用者数:+67.8万人(予想67.8万人)
- (2)失業率:3.8%(予想3.9%)
- (3)平均時給:前月比+0.0%(予想0.5%)
3つも数字が出てくると「それで、この結果をどうみるの?」と困る人もいる思います。
まず、雇用者の伸び(1)と失業率(2)ですが、予想以上に雇用者が増えていて失業率も予想以上に下がっていたので、今月もアメリカの雇用は強かったと言えると思います。
問題があるとしたら、(3)賃金の伸びが前月から横ばいで伸びていないことです。
前月の賃金は伸びが大きかったので、2月はその反動もあって賃金がいまいち伸びなかった恐れはあります。
なので、この1ヶ月のデータだけで判断するのは難しいですが、最近の賃金の伸びを見ているとアメリカの景気は大丈夫かと少し心配になります。
2月の賃金の問題点
アメリカの賃金の伸びの問題は、最近の物価の上昇にまったく追いついていないことだと思います。
(上で結果を確認した前月比ではなく)前年比で見てみると、平均時給は5%上昇しているので日本人からすると羨ましい限りですが、残念ながらこの5%の伸びを持ってしても、最近のアメリカの物価の伸びには勝てていません。
次のグラフは、アメリカの賃金の伸びと物価の伸びを比べたものですが、ほとんどの月で物価の伸びのほうが上回っています。
これでは毎月賃金が上がっても、モノの価格の上昇のほうが大きく、まったく豊かになれない状況が続いています。
今のアメリカはインフレが景気を損なっていると言えそうです。
1月は賃金の伸びが大きかったので、このままのペースを維持できれば物価の伸びに少しでも近づくところだったのですが、残念ながら2月の賃金の伸びは失速してしまったようです。
景気後退が近づくアメリカ
ここまでに雇用統計を振り返りながら、アメリカはインフレで景気が損なわれているという話をしました。
賃金の伸びが物価の伸びを下回っている月が続くと、このままではアメリカの景気は低迷へと向かう気がしています。
また、そう考えたのは私だけではなかったようです。
次の図は10年米国債の利回りから2年米国債の利回りを引き算したグラフです。
景気後退が近いことを投資家が察知するとこのグラフは下に向かうことが知られていて、最近は下落傾向が続いていたのですが、雇用統計の日はグラフの値はさらに急低下したようです。
市場の投資家は予想していたよりも、アメリカの景気後退は早く訪れるかも知れないと見方を改めているようです。
物価の伸びが問題視されるアメリカですが、これから1年から2年の間にアメリカは景気後退を経験して、インフレ率が少しは下がる経験をするのではないかと思っています。
そして、予想通り景気が鈍化してインフレ率が下がってきたときに、どのような景気刺激策が打たれるのかが注目です。
せっかく2022年3月から引き上げる政策金利が次の不況で再びゼロになるのは既定路線だと思いますが、もしも新型コロナの時のように国民や議員が現金給付を望むような展開になれば、次こそ止められない大きなインフレにつながる恐れがあると思っています。